AIにとってGPUはなぜ欠かせない存在になったのか 長谷佳明
米国の代表的な株価指数・ダウ工業株30種平均で2024年11月に銘柄の入れ替えが行われた。パソコンやインターネットの普及とともに成長し、半導体で圧倒的な競争力と収益を誇ったインテルが外れ、AI時代の象徴といえるエヌビディアが新たに採用されたのだ。 ダウ30種平均は、米国のダウ・ジョーンズ社が企業の成長性や投資家の関心などから厳選した30種で構成される。インテルが採用されたのは、ドットコムブームの最中の1999年だった。現在の採用銘柄は、アップル、マイクロソフト、アマゾンなどのIT企業や、ゴールドマンサックス、ジョンソン&ジョンソン、3M、ウォルマート、ディズニーなど米国を代表する企業が並ぶ。 エヌビディアは半導体の中でも特にGPU(Graphics Processing Unit)の設計に特化した企業だ。この連載でも、AIとエヌビディアに関連する話題をたびたび取り上げてきたが、今回は改めて、なぜAIにとってGPUが欠かせない存在となったのかを解説したい。 ◇ディープラーニングの陰の立役者 現在のAIブームは2012年に始まる「第3次AIブーム」である。AIとGPUの切っても切れない関係も12年にさかのぼる。今年のノーベル物理学賞の受賞で話題となった、カナダ・モントリオール大学のジェフリー・ヒントン教授らのグループが、12年に行われた物体認識の精度などを競うコンテスト「ImageNet Large-Scale Visual Recognition Challenge 2012(ILSVRC 2012)」で、ディープラーニングを用いたモデルが圧倒的な勝利を収めた。ここでGPUは大きな役割を果たした。 コンテストに関する論文の要旨には「To make training faster, we used non-saturating neurons and a very efficient GPU implementation of the convolution operation.(学習を高速化するために、非飽和ニューロンと畳み込み演算の非常に効率的なGPU実装を使用した)」とある。このモデルの誕生には、今日のAI技術の礎となっているディープラーニングとともに、もう一つの欠かせない要素としてGPUの存在が確認できる。