性をタブー視せず、大人になるからだを受け止めて――障害のある子どもへの性教育 #性のギモン
そもそも、池野さんは特別支援学級の保護者から要望があって性教育を始めたのだという。 「おりものが気になって何回もトイレに行くとか、ずっとおちんちんを触っているとか、親御さんは本当に困っていらした。『どう教えたらいいか分からない。学校でやってください』と何度も言われて、やっと重い腰を上げました(笑)」 最初は『生活をゆたかにする性教育』(クリエイツかもがわ)などの書籍や勉強会を頼りに、手探りだった。試行錯誤を重ねるうちに、特別支援学級ならではの工夫も生まれる。話を聞くだけでは理解や集中が難しい子どもが多いので、絵やマグネットボードも見せながら話し、実際に体験してもらうことも心がけた。男の子も交えて、生理用ナプキンをつけたり替えたりし、タンポンや吸水ショーツなどの使い方を確かめ、生理用品のバリエーションを体感した。繰り返しも大切なので、生理の授業は3回、保健所から新生児の人形を借りてお世話をしてみる授業は2回、少しずつ内容を変えながら実施した。 池野さんは、特別支援学級で性教育を実施することに大きな意味があると感じている。 「全般的に障害のある子どものほうが定型発達のお子さんより、失敗体験や人間関係でジレンマを抱えて育ってきて、自己肯定感が低いお子さんが多いと感じています。だから性教育を通して、自分は自分でいいんだ、これが好きでいいんだ、イヤなものはイヤだって言っていいんだ、と学ぶことは大切です。そして社会の中で誇り高く生きていってほしいなと思っています」
初潮が来ても動揺せず、自分でナプキンをつけて得意げ
冒頭のミドリさんは、ユキさんが小学校を卒業する間際に初潮を迎えた時、うれしそうにしていたことが印象に残っている。 キラキラタイムで生理について学んだ後、自分にもそれが来ると分かってからは、いつ来るのか、足の間から血が出て大丈夫なのか、ユキさんはミドリさんに何十回となく尋ねていた。早春の朝、いよいよ「生理になったかも」とユキさんが告げに来た。 「もっと動揺するかと思ったんですが、ついに来たっていう感じで、本当に得意げでしたね。家庭でも『おめでとう!』って大いに盛り上げました。ちゃんと自分でつけたんですよ、ナプキンも。ああ、キラキラタイムが生きているなと思いました」 一つのことにこだわる傾向があるユキさんは、生理になるたびにミドリさんを質問攻めにする。 「先生に『例えば、質問は1日5つまで、とルールを決めてみたらどうですか?』と教わって、どうにかしのいでいます(笑)。基本的には自分が大人のからだになったのをすごくうれしいことだって受け止めているので、素晴らしいことですよね」 ミドリさんがキラキラタイムの授業を見学した時は、子どもが「手をつなぐ」「腕を組む」「ハグする」などの行為について、相手に「~していいですか」と許可を取るという内容だった。 「先生は『もしもイヤなら、断ってもいいんだよ』って。これ、将来ユキが他の人との関係を作っていく時に大事なことだな、きっと家では教えてあげられなかったろうなって思いました」