悩める名門TEAM IMPUL、チームが抱える課題を星野一樹監督が分析。富士テスト初日には車両スワップにもトライ
国内レース界きっての名門チームであるITOCHU TEAM IMPULは、今季のスーパーフォーミュラで苦戦を強いられている。ここまで3戦を終えて、ハーフポイントとなった第3戦SUGOで国本雄資が獲得した7位2ポイントが唯一の入賞だ。 【リザルト】スーパーフォーミュラ富士公式テスト:初日午後タイム結果 TEAM IMPULの苦戦は、19号車のドライバーが毎戦のように変わっていることも当然無関係ではないだろう。テオ・プルシェールが開幕戦を終えた後にインディカー参戦のため急遽離脱すると、チームは第2戦でベン・バーニコート、第3戦で平良響を起用することになった(平良は第4戦も出走予定)。 しかしF2王者のプルシェールは開幕戦でセットアップが噛み合わず18位に終わっており、昨年を振り返っても平川亮は活躍したものの、シリーズ7勝の実績を誇る関口雄飛がまさかのノーポイントに終わるなど、プルシェールの一件以前から苦戦の一端が見え始めていたのも確かだ。 星野一樹監督はここまで3戦を終えて、流れが好転し始めていることはポジティブに捉えつつも、現状に満足しているわけではないと強調する。チームの現状の課題として捉えているのはどういった点なのかと尋ねると、星野監督は「話が長くなってしまうかもしれませんが……」と前置きしつつ、次のように語った。 「データ管理をしっかりできていなかった部分があると思います」 「目の前のバランスを追い求めすぎていて、あっちに行ったりこっちに行ったりする中で、うまく行った時もあれば、うまく行かない時は戻って……というやり方ではうまくいかないと思います。きちっとしたデータ管理の下に、どこのスポットにはめていくかといった良いエンジニアリングをチームとしてしていきたい気持ちがあります」 このように、セットアップに関して蓄積されたデータをより良い形で活用することが課題になってくると語った星野監督。しかしながらその反面、セットアップを意識し過ぎて頭でっかちになってしまうことも避けたいと、複雑な心境を語る。そこには自身がドライバー時代に感じた思いがあるという。 「自分が(レーシングカーから)降りるまでの最後の数年は、経験が邪魔をして、セットアップばかりを考えてしまうようになりました」 「でも、レースってドライバーが速く走ることを常に考えていないといけません。自分も昔は、恐ろしく攻めてあとコンマ3秒(削る)というのを練習からやっていたのに、それがなくなってきちゃっていたことに降りてから気付きました。生意気に聞こえてしまうかもしれませんが、決して上から言いたいわけではなく、自分がドライバー時代にできなかったからこそ、そういったことも伝えたいです」 「あまり頭でっかちにならず、目の前の1周を速く走ることを純粋に突き詰めてほしい。それがSFであってほしいし、そういうドライバーが勝ってほしいです。さっきのコメントとは正反対になってしまうかもしれませんが、今はその両方の気持ちを持って臨んでいます」 そして迎えた富士テストでTEAM IMPULは、初日から思い切ったトライをした。20号車のドライバーである国本が、午後のセッションで平良の乗る19号車に乗り込んだのだ。そして平良も20号車をドライブ……いわゆる車両スワップだ。これはスーパーフォーミュラのテストにおいて稀に見られる光景だ。 車両スワップは、ドライバーが車体ごとのわずかな個体差を感じ取る側面もある。国本もそういった側面があることを否定しなかったが、どちらかというと大駅俊臣エンジニア率いる19号車のスタッフがどのような仕事の進め方をしているのか確認したかったのだという。 「午後は19号車に乗りましたが、いろんなアイテムを試しました。特に深い意味はなくて、19号車がどういう流れで走っているのかを学びたかったし、それをフィードバックして20号車に乗りたかったです」 「もちろんそれ(個体差の確認)もありますが、19号車に乗ることで何か自分にプラスになればという思いでした。クルマだけを見る(比較する)のであれば同じセットアップにした方が分かりやすかったと思いますが、クルマのセットもだいぶ違いましたから」
Motorsport.com / Japan
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