部下の気持ちがわからない…見下し発言を連発する「発達障害グレーゾーン」の上司が、じつは抱えている「意外な悩み」
公認心理師として行政や企業などの職場で約1万人の悩みを聴いてきた舟木彩乃さんは、相談ごとの中に、発達障害グレーゾーンの特性から来る問題がひそんでいることが多いと話します。 【マンガ】息子の暴力が止まらない…発達障害と向き合う「母の悩み」 病院で診断を受ける「発達障害」とはちがう「グレーゾーン」とはどのようなものなのか、周囲はどのように対応すればよいのか。 前編記事<いったい何様…?仕事ができる「メーカー勤務」40代上司のじつは「本人だけが知らなかった」残酷な事実>に引きつづき、『発達障害グレーゾーンの部下たち』より一部抜粋・編集して解説します。
離職を泣きながら訴える部下もいた
指示された仕事をSさんに提出したとき「〇時間かけてこの程度ね」とか「なに言っているのか分からない。結論から言って」などと言われた。「これ以上のことは求めないから、せめてここまでやって」などと見下すような発言があった。 また、どんな事情があったとしても、マニュアル通りに仕事をしないと激昂することが多い。できないと思った部下に、指導するのではなく、部下の仕事を奪って「あとはこちらでやるのでもう結構」と吐き捨てるように言った。 Sさんの態度に耐えかねて、「異動したい」と人事部に泣きながら申し出た部下もいたということです。 さまざまな場面でSさんとのコミュニケーションに悩んでいる部下たちは、なにか共通の話題で円滑なコミュニケーションがとれないかと模索していたところ、Sさんは歴史が好きだということが分かりました。以降、部下たちはSさんに歴史の話題を振ったりしながら、少しずつ分かり合おうとしたそうです。 Sさんは、自分の好きなテーマでみんなが話しているときは、楽しそうに雑談に加わることもあるようです。ただ、Sさんの知識が深すぎて、マニアックな部分にフォーカスすることが多く、部下たちは顔を引きつらせて聞いていることもあるという話でした。 話し出すと止まらないところがあり、機嫌が良いときは打ち合わせをしているときでも、戦国武将や戦術などの話を引き合いに出して、長々と仕事の進め方や今後の展開などを話すこともあります。これは、ごく一部の歴史好きな部下には好評ですが、対応に困っている部下のほうが多いようです。 筆者は、人事からの依頼でSさんからも話を聞きました。管理職として、部下とのコミュニケーションなどで困りごとはないかと問うと、「とくに問題はないと思う」とのことでした。