部下の気持ちがわからない…見下し発言を連発する「発達障害グレーゾーン」の上司が、じつは抱えている「意外な悩み」
立ち直るための重要なステップ
続いて、部下の教育や指導、キャリアなどについて考えを聞いたところ、「部下に任せてみて、能力的に難しそうな仕事だったときは、自分が引き取ってやっている(お互いにとって時間の節約になるし、できないことをするのは部下もストレスになる)」、「歴史好きな部下が多いので、仕事の指導をするときや打ち合わせのときなど、戦国時代の話などを引き合いに出して喜ばれている(自分が気を遣われていることに気づいていない)」、「マニュアル通りに仕事を進められないことはおかしい(ここは譲れない部分である)」という回答でした。 筆者は、管理職としての役割に部下への仕事の指導も含まれていること、部下からの話を自分の「こうあるべき」というマイルールを横に置いて聞くこと、指示の仕方に気をつけること、マニュアル通りにいかないこともあることなどを伝えました。 すると、「管理職になってから仕事に面白みを感じない」という話が出てきました。そして、部下であったとしても、自分の仕事のペースややり方を乱されることは非常に不快に感じる、ということでした。 Sさんには、ASD特性が出ており、グレーゾーンの可能性があるかもしれません。筆者は、仕事のスキルがもともと高いSさんには、部下の気持ちをおもんぱかるような声がけも難しいように思いました。 Sさんと年次が近い中堅社員を部下とのやり取りの際に間に入れるような提案をしたところ、そのほうが助かるとも言っていました。 彼の依頼もあって人事担当者に状況を伝えたところ、人事とSさんとの面談が設定されることになりました。そして、Sさんは次の異動のタイミングで、管理職というポジションではあるものの、実質上は部下がつかない部門でデータサイエンティストとして、新しいキャリアをスタートさせることになりました。 異動後は、本人もストレスフリーで働き、実績も出しているということでした。 本件は、人事が介入したこと、規模が大きい企業であったことなどが幸いして、上手くいった事例です。 しかし、そのような条件を満たしていない場合であっても、人事や専門家が公平な立場で介入して、各々の事情を把握し、部下に対応法をレクチャーしたり、両者の間に社員を介入させたりするステップが重要になります。 …つづく<仕事先の失敗で苦情連発…予定通りに行動できない「発達障害グレーゾーン」30代女性の「生きづらさ」>では、主に知られているのは、3つの発達障害の分類について解説しています。
舟木 彩乃(ストレスマネジメント専門家・公認心理師)