ガチ中華だけではない、中国発ブックカフェとライブハウスが東京に出現した理由
今年の秋分の日にあたる9月23日午後、東京銀座の中国語ブックカフェ「単向街書店」(中央区銀座1-6-1)で、筆者は「勢い増すガチ中華この先どこへ向かう?―ガチ中華から浮かび上がる華僑たちの情熱とビジネス」と題したトークイベントを行った。 同書店の公式サイトのイベント告知には、次のような紹介がされた。 〈2020年以降、コロナ禍にもかかわらず『ガチ中華』と呼ばれる中国各地の料理店の出店が加速していく。日本人の嗜好の変化や旅ロスという背景もあり、ガチ中華は多くの日本人にも喜ばれてきた。進出している店舗は、中国でチェーン展開しているお店から個人店まで様々だ。今まで日本で主流だった四大料理以外に、チベット・雲南・湖南料理など数々の中国地方料理が増えている。 2024年に入った現在でも出店ペースは衰えていない。この先ガチ中華はどうなっていくのか。ガチ中華から浮かび上がる華僑たちの果敢な行動力とビジネスの構築の仕方、またそこに潜む懸念なども含め中村氏にお話をしていただく〉 銀座の単向街書店は、2023年8月に北京発の中国語書店の海外1号店としてオープンしている。1階が書店で2階はカフェだが、週末の夜や休祝日の午後、中国の人たちを中心に、一部筆者など日本人を含めた、さまざまなトークイベントやワークショップが催されている。 内容は多岐にわたっていて、中国文学や日本のサブカルチャー、フェミニズム、華流ドラマに関する専門家のトークや中国のドキュメンタリー映画の上映会といった文化的なものから、留学後の日本での起業や不動産投資に関する実践的な体験談など、今日の若く知的で独立心の強い中国人が関心を持つものが多い。 筆者が面白いと思ったイベントの1つは、カメラマンの秋山亮二さんが1983年に刊行した写真集『你好小朋友-中国の子供達』とその復刻版(2019年)に関するものだ。この作品集の被写体になっているのは、中国で改革開放が始まった1980年代前半の子供たちである。 この時代を生きた中国の大人たちは、文革のくびきからようやく解放され、未来は良いことしかないと信じられた、曇りのない日常を過ごしていたと思われる。その後、被写体となった当時の子供たちが大人になり、今日その一部が大量出国し、日本の留学後にそのまま就職、また起業を始めた。そんな彼らが単向街書店の主な顧客となっている。