意外にハイテクな天気予報 「数値予報」と「高解像度降水ナウキャスト」の違いは?
8月に「高解像度降水ナウキャスト」がスタートしました。より局地的な大雨など1時間以内の降水状況を予測するもので、従来のナウキャストより精度が上がり、話題になりました。この高解像度降水ナウキャストと、私たちが普段、目にする1日先や1週間先の天気予報では、実は予報の仕方がまったく違います。どう違うのか、みてみましょう。
天気予報の根幹担う「数値予報」
一般的な天気予報は、「数値予報」といわれる方法が基になっています。数値予報というと、聞き慣れないかもしれませんが、スーパーコンピュータ上に構築した仮想の大気において、様々な観測データを基にある特定の時刻の大気の状況を数値的に解析し、それを物理法則に従って時間発展させて将来の大気の状態を予測することです。 それに対し、高解像度降水ナウキャストでは、スーパーコンピューターを使ったシミュレーション、つまり数値予報は活用していません。 天気予報はその昔、知識や経験に基づいて予測していましたが、1959年から気象庁で数値予報が始められました。当然、数値予報の開始の当初から直ちに天気予報に利用できるほどの精度はありませんでした。スーパーコンピューターを活用するのは、計算するデータ量が膨大だからです。コンピューターの処理量や速度が速まれば、それだけ早く正確な予測ができるので、気象庁は随時、新しいスーパーコンピューターを導入しています。現在は、1秒間に847兆回の計算能力を持つ9代目が2012年6月から稼動しています。
ボールの動きを予測するのと同じ原理
物理法則に基づいて予測するのが数値予報ですが、具体的にはどういうことでしょうか。これは、投げ上げたボールの軌道の予測と同じ原理だといいます。 どういう向き、どれくらいの速さでボールを投げ上げるか、という最初の状態を把握し、次に、重力や空気抵抗などボールを支配する物理法則が分かれば、ボールが動く場所を計算することができます。 これと同様に、最初に大気の状況を正確に把握し、物理法則にのっとって計算すれば、24時間後に低気圧がどこに動くかなど、その先の天気を予測できるというわけです。そういう意味では、予測の出発点となる「最初の大気の状態(初期値)」をいかに正確に把握するかが重要になってきます。 そのために、気圧、気温、風、湿度など、さまざまな観測データを世界中から集めます。観測データは、地上や海上での観測、気球を活用した高層観測、航空機による観測、そして衛星からのデータも活用し、地上や海上から観測できない部分をカバーします。 ただ、ボールと違って、大気は一筋縄ではいきません。観測データはそのまま使えるわけではなく、誤差がある場合もあるので、より誤差の少ないデータを使って、正確な初期値をつくります。また、風の動きや気温の変化、水蒸気の凝結などのように、大気にはいろいろと複雑な状況があるので、それらの状況を考慮して計算する必要があります。 こうして算出された数値予報は、各地の気象台に送られ、天気予報や注意報・警報の発表に活用されます。また民間気象事業者にも提供されます。