プロ野球選手→公認会計士合格。「そんなことしていて大丈夫か」ロッカールームでもテキスト開いた現役時代
遅咲きのプロデビュー「引退は常に頭の中に」
ヤマハ入社後、1年目からリリーフとして活躍。入社2年目には、ヤマハが社会人野球日本選手権大会で初優勝を果たし、池田さんは最高殊勲選手賞を受賞した。 しかし25歳の時、ヤマハを辞める決断をする。池田さんは2016年10月のドラフトで、読売ジャイアンツからドラフト指名を受けたのだ。安定した社会人野球の世界を離れることに不安を抱えながらも、プロ野球の道に進む決断をした。 「2年間お世話になったチームを離れることに不安や葛藤を感じました。でも、社会人野球1年目が終わるくらいから、自分の能力がぐっと上がった自覚があって。 プロ野球のスカウトもいただいていたので、挑戦してみるのも良いかもしれないと考えるようになりました」 とはいえ、25歳からプロ野球選手というのは一般的に遅咲き。先述の通り、野球選手は27歳前後で引退する場合が多い。 「プロ野球の世界に入った瞬間から、どのくらい野球を続けられるだろう、と考えていました。僕のような社会人上がりの選手は、即戦力としての活躍を求められている。 すぐに結果を出さないと速攻でクビにされてしまう。引退後のことは常に頭の片隅にありました」
テキストを広げた、試合前のロッカールーム
読売ジャイアンツで3年活躍したのち、東北楽天イーグルスへ移籍。計5年間をプロ野球選手として過ごした。異なるカラーの球団2つを経験できたことは、貴重な経験になったと池田さんは語る。 その一方で、引退後のキャリアについての不安は拭えない。池田さんはプロ野球選手として活躍していたある日、会計士を目指して勉強し始める。 「プロ野球選手になって、税理士さんにいろいろ相談しているうちに、税金に興味を持つようになったんです。自分が支払うものなのに、あまり知らなかったなと思って。 だんだん、税理士という仕事がかっこよく見えて、自分も資格を取ろうと思いました。 けれど、税理士の試験を受けるには、大学で社会科学の単位を取るか、簿記1級を取るか、銀行や税理士事務所での業務経験を2年以上積むか……。いくつか方法はありますが、どれもハードルが高かったんですよね。 それなら受験資格がなく誰でも受験でき、税理士登録もできる公認会計士試験を受けようと思い、勉強を始めました」 公認会計士試験の合格率は7% 前後。当然、かなりの量の勉強が必要となる。プロ野球選手との両立のため、朝4時に起床し、勉強時間を捻出した。試合や練習の直前・直後も隙間があれば勉強した。 「試合の前に、スクールに『この問題が分からないのですが……』と電話して、解き方を教えてもらったこともあります。勉強のモヤモヤをすっきりさせてから、集中して試合に臨む。そんなルーティーンができていました」 試合の直前、緊張感のあるロッカールームで、選手はそれぞれ試合に向けて集中力を高めるが、池田さんは、会計士試験の教科書を見つめる。他の選手からは、「お前何見てんの?」「試合前にそんなこと考えていて、大丈夫か?」と声をかけられることもあった。 「プロ野球選手の多くは、現役時代にセカンドキャリアのことなんて考えないんですよ。むしろ、辞めることを考えるなんてタブーなんです。自分で負けを認めるようなものだから。 『辞めた後、何する?』なんて話は他の選手とは基本的にはできません 」