<リオ五輪>女子バスケ、米国を知る渡嘉敷が挑む世紀の番狂わせ!
日本女子バスケットのエース渡嘉敷来夢が新たな挑戦を始めたのは、15ヶ月前のことだ。 昨年5月17日、WNBAシアトル・ストームのトレーニング・キャンプが開始した。チームの立て直しを図るストームには、長年リーグのスターとして存在し、日本時間17日の早朝にリオ五輪の決勝ラウンド、準々決勝で対戦することになった米国代表の司令塔でもあるスー・バードに加え、同年のドラフトで全体の1位指名を受けたジュエル・ロイド、同3位のカリーナ・モスケーダ・ルイスとトップ3のうちの2選手が加わるなどで注目されており、練習の途中から男子選手が加わって実戦練習が始まるなど初日から活気に満ち溢れていた。 そんな中、時に通訳の助けを借りながら、懸命に走り、ゴール下で男子に負けない気迫を見せてプレーしていたのが渡嘉敷だ。日本では常にトップの座にいるリーダー。だが、そこでは他選手に負けまいと必死にボールを追いかける挑戦者だった。 初日の練習を終えた渡嘉敷は、まだ緊張感が残っている様子で「今日は初めてということもあったので、すごく頭を使って行った練習だった」と話した。 異国で違う言語を話し、同じバスケットでも試合に行き着くまでの準備の仕方が違う。また一緒に練習をするチームメイトは、世界から集まった有能な選手ばかり。技術も体の大きさも、そしてパワーも、これまでやってきたバスケットとは全く違った。 「練習の仕方だったり、体の強さだったり日本とはまた違う」と話した渡嘉敷は、「(男子を相手に行った)5分ゲームは結構疲れました」と苦笑いを見せた。 自らの力を試すオープン戦が行われたのは、その9日後だった。相手はリオ五輪米代表のセンター、ブリトニー・グライナー率いるフェニックス・マーキュリー。ベンチから17分プレーした渡嘉敷は、フィールドゴール4本中3本を決めるなど8得点、6リバウンド、2ブロックショットでチームの勝利に貢献した。2ブロックショットのうちの1本は、今回、代表のユニホームを着て17日に対戦するグライナー相手に決めたもの。プレシーズンといえどもロスター入りが確定していない渡嘉敷にとっては自らの力が試される試合であり、観客を会場に入れた初めての試合だった。 当然緊張はしたが、「ま、いいか」と開き直り、「パスが来たらシュートを打てばいいし、自分はディフェンスを売りにしているので、そこからリズムを(掴もうとした)。自分のことは自分でコントロールしないといけないなと思った」と冷静にプレーした理由を話した。 プレシーズン2試合目を経て、渡嘉敷は開幕ロスター入りを果たし、自らのバスケットボール人生の新たな章を開くことになった。日本人としてのWNBAロスター入りは、萩原美樹子、大神雄子に続いて3人目だが、渡嘉敷は、ここがゴールではないと浮かれてはいなかった。 「ここから1番になるにはどうしたらいいかということを自分なりに考えて。それこそ活躍してこっちでもある程度名前が出るようになったりすれば、その時に日本人初めてになるのかなという部分もある。だからこれからですよね。やっとスタートラインに立てたという感じなので」 実際、渡嘉敷は、これまでと違う立場、役割にどう対応していくかということからスタートした。日本ではセンターで、中でプレーしている。しかしストームでは外でプレーすることを要求されるパワーフォワード。しかも開幕時点ではベンチからのスタートで、渡嘉敷がこれまでほとんど経験したことのないことばかりだ。