<リオ五輪>女子バスケ、米国を知る渡嘉敷が挑む世紀の番狂わせ!
順風満帆だった1年目。シーズン終盤にチームを抜けて参加したFIBAアジア女子選手権では日本を優勝、リオ五輪に導き、2大会連続となるMVPにも選出されたが、ストームと再契約し迎えた今季、新たな試練が待っていた。今年のドラフトでストームは、コネチカット大を4年連続全米王者に導いたブリアナ・スチュアートを全体の1位で指名。今季注目のスーパールーキーは、長年WNBAのスター選手として存在し、過去2大会の代表メンバーだったキャンデイス・パーカーを押しのけて、今回のリオ代表に名を連ねている。 スチュアートとポジションの被る渡嘉敷も、自動的にベンチからの出場となった。今季21試合をプレーした時点での1試合平均出場時間も11.6分と昨季から9分少なくなり、1試合平均4.3得点、1.8リバウンドとこちらも昨季の半分ほどとなっている。ただ、今季開幕戦で話を聞いた時、渡嘉敷はスチュアートの存在を全くマイナスには受け取っていなかった。 「彼女がいる限り先発はないというのはわかっている。でも『自分がどんなに先発になりたいと頑張っても彼女がいる限りはなれない』という風に思ったら自分のモチベーションが下がってしまうので、いつ出るとかは考えず、逆に彼女を少しでも休ませたりできる役割、自分が出た時にチームに勢いがつけられればいいと思っている」 「彼女と自分では同じ4番(パワーフォワード)でもプレースタイルが違う。彼女は外に出ても中に入ってもいいというようなルールがあって、自分は基本外にいなきゃいけないという中で、彼女が外に出た時にどういうプレーをしているのかといのはベンチから(研究している)。基本的には彼女のプレーを少しでも盗めたらなという気持ちで常に見ているので。そういった中で自分はすごくいいチームにいると思って、そこはポジティブにとらえています」と話した。 その日の相手はロサンゼルス・スパークスだった。 パーカーが看板選手のチーム。米代表チーム入りしたスチュアートとスチュアートが入ったことで外されたパーカーの因縁の対決。その勝負でスチュアートはストーム最多の23点デビューを飾ったが、パーカーは34得点してスパークスを勝利に導き自らの実力を見せつけた。 パーカーについて渡嘉敷は、「すごい。やっぱり見ていて面白いです。ああいう選手が、ついていて嫌がるようなディフェンスができたらいいなと思います」と話していた。 渡嘉敷を大きく成長に導いた米国代表と決勝ラウンドで対決するのも何かの縁である。五輪6連覇を狙う大きな壁に違いないが、その試合を前に、渡嘉敷もパーカーと似たような気持ちを持っているのではないか。 渡嘉敷がよく口にする言葉がある。 「私、負けず嫌いなんで」―。 15ヶ月前から今に至るまで、いい経験も辛い経験もした。平均身長が177cmしかない小さな日本が、金メダルの大本命である米国を倒せば、世紀の番狂わせとして歴史に残るだろう。渡嘉敷の「負けず嫌い」の精神は、相手が大きければ大きいほど強くなる。 (文責・山脇明子/スポーツライター)