5年で2度優勝の日ハム栗山監督は名将か?
日ハムが142試合目にして4年ぶり7度目のリーグ優勝を決めた。6月下旬の時点で首位のソフトバンクと最大11.5差があったゲーム差をひっくり返しての大逆転劇。就任5年目となる栗山英樹監督(55)は、これで優勝2度、クライマックスシリーズ2度という好成績を残している。監督、コーチ経験がないまま監督就任した人物だが、果たして“名将”と言えるのか。 栗山監督の采配には大きな特徴がある。 ぶれない部分と、臨機応変に対応する部分を使い分けしている点だ。ぶれない部分は、批判があろうと貫いてきた大谷の二刀流であり、たとえ結果が伴わなくとも中田を4番で使い続けた我慢采配だ。 “名将”野村克也氏は、「エースと4番は育てられない」と語ったが、栗山監督がそのエースと4番を育てた。もちろん、2人の群を抜く素材があってこその我慢だったのだろうが、指揮官が、目先の勝ち負けに左右されずに方針を貫くのは尋常な決意ではない。結果、大谷は二刀流として、10勝4敗、打率.322、22本、67打点という史上初の10勝&20本をクリアして開花。中田は、キャリアハイの110打点をマークした。 パ・リーグの野球をよく知る評論家の池田親興氏は、「レアードの起用に関してもぶれなかった。他のチームの監督ならば、打線が得点力を失ったとき、レナードをクリーンナップに置きたがるだろう。実際、9試合ほど5番でつかっているが、栗山監督は、打線のつなぎと、レアードの打率が低くとも一発の怖さを持つという特性を重んじて6番、7番で我慢した。優勝を決めた試合もレアードが決めたが、走れる選手、粘りのある選手、一発のある選手と、選手の適材適所を見極め、その能力を最大限に引き出すのが、栗山監督の采配の特徴だと思う」と、高く評価した。 コリジョンルールが採用されると、そのルール特性を見極めて戦略的にセーフティースクイズを多用。西川らを軸に機動力も積極的に使った。盗塁成功率、犠打成功率も高い数字をキープした。 一方、チーム状況に応じて臨機応変に変化する采配は、投手起用に見られた。その代表が守護神・増井の先発転向だ。防御率が6点になるほど調子を落とすと、7月に先発転向を直接打診、当惑する増井を説き伏せ、転向した先発では6連勝するなど、8月の大谷不在の穴を埋めた。 増井の代役ストッパーにはマーティンを置き、そのマーティンがベンチ内で足を捻挫して離脱すると、迷わず吉川を急造ストッパーに指名した。その吉川がなかなかストッパーという環境の違いに慣れず、安定感に欠くと見極めると、重要なソフトバンクとの最後の頂上決戦では、バース、谷元という新しい勝利方程式を用意した。その後、宮西にストッパーを任せた試合もある。吉川は、再度先発に転向させ、優勝のかかった27日の西武戦で先発させている。「スーパーストッパー」と、栗山監督はその臨戦態勢を表現していたが、ここでの決断が少しでも遅れていれば、ソフトバンクに隙を見せたのかもしれない。