5年で2度優勝の日ハム栗山監督は名将か?
優勝への大きなポイントとなった7月3日のソフトバンク戦では「1番・投手」で大谷を起用するサプライズ。そして、大谷は、その起用に応え、先頭打者アーチを放ち、怒涛の15連勝の最中、ソフトバンクに3タテを食らわせた。これも栗山監督の奥深い采配である。 これらを生み出したのは、24時間、野球のことを考えながら続けてきた勉強と覚悟だろう。 栗山監督は、読書家として有名だが、中国戦国時代の思想家が書いた「韓非子」にまで目を通して、上に立ち人を動かす指揮官は、どうあるべきかのヒントにしている。池田氏は、直接インタビューした際、「昨年ソフトバンクを走らせたのは私の責任」と答えたことが忘れられないという。 「凄い覚悟だと思った。監督を5年続けた中での失敗や反省が栗山監督の場合、どんどん次へつなげっているように見える。栗山監督の選手としての実績は他チームの監督に劣るが、過去の名声や実績がある人は自分ばかりを見て、自分の選手時代の経験をものさしにするが、栗山監督は自分を見ずに選手を見た。そして、過去の実績ではなく、今の理論、言葉に説得力を持たせるための理論、方法論を突きつめた」 日ハムは、フロントが現場の編成、コーチ人事のほとんどをリードするフロント主導型の代表的なチームだ。ドラフトと、外国人が補強の中心で無駄な“お金”は使わない。しかも、ルーキーから2年目、3年目の選手の育成についても、フロントが細かく制限を設けて、現場の勝手にはさせない。 ただ常にデータを栗山監督ら現場の指導者と共有。選手の力を数値化して客観的に見られるようになっている。ともすれば、目先の勝負に走る現場との、軋轢が生まれてもおかしくないが、「僕は中間管理職」と、公言する栗山監督は、与えられたものでベストを尽くすというフィールドマネージャーに徹した。 新人王の最有力となっている高梨や、ルーキー加藤らが出てきた背景には、フロントと栗山監督の信頼関係の深さと、栗山監督の中間管理職と割り切る、マネジメントの有能さと無縁ではない。 前述の池田氏が言う。 「アナログ監督の時代からデジタル監督への時代へ変えたと表現すればいいのか。栗山監督は、これからの新しい時代の監督像、名将像を作り上げたことは間違いない」 名将ではなく、新時代の監督の扉を栗山監督は切り開いたのかもしれない。