【陸上】日本選手権みどころ女子トラック編/パリ五輪内定の田中希実が3種目挑戦 100mHは田中、福部が五輪出場に向けて熱戦
パリ五輪代表選考会を兼ねた第108回日本選手権が6月27日から30日まで、新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われる。日本一の座、そしてパリ行きの切符を懸けた激闘のみどころ【女子トラック編】をチェックしていく。 男子トラック編/混戦の100mは栁田大輝が初V狙う!ハードルはパリ五輪代表へ熾烈、400mに44秒台決着の予感
五輪代表・田中希実が3種目にチャレンジ
1500m、5000mで日本記録を持つ田中希実(New Balance)は、今年5月のDLユージン5000mで自己4番目の14分47秒69をマークして参加標準を突破。すでにこの種目での五輪代表をつかんでいる。今大会では2年ぶりに800m、1500m、5000mの3種目にエントリーしているが、1500mは5連覇、5000mは3年連続4度目の優勝が懸かる。 5000mはブダペスト世界選手権代表の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が出場をキャンセルしており、樺沢和華奈(三井住友海上)が田中を追う一番手に挙がる。さらに日本代表経験のある五島莉乃(資生堂)や楠莉奈(積水化学)らもペース次第では五輪出場の可能性を持つ。ワールドランキングで出場圏内につけている山本有真(積水化学)は、どこまで調子を上げられるかに注目が集まる。 1500mでは田中が持ちタイムで2番手以下を大きく引き離しており、連覇は濃厚。あとはセイコーゴールデングランプリで上位に入った後藤夢(ユニクロ)、木村友香(積水化学)、井手彩乃(資生堂)といった面々が田中に挑む。木村は「この種目でパリを狙いたい」と強い覚悟を持つ。 東京五輪代表の卜部蘭(積水化学)は一時期調子を落としていたものの、兵庫リレーカーニバルで3位(4分12秒14)に入るまで復調。U20アジア選手権金メダルのドルーリー朱瑛里(津山高2)が先輩たちにチャレンジする。 田中がエントリーした種目において、唯一挑戦者として挑むのが800mだ。これまでの最高順位は2位(22年)で優勝はまだない。 この種目で注目を集めるのがGPシリーズで3連勝を飾った久保凛(東大阪大敬愛高2)だ。静岡国際で出した高校歴代3位の2分03秒57は今季リストトップに立ち、金栗記念では田中との直接対決で先着するなど、8年ぶり高校生Vの可能性が高まっている。 もちろん、前回Vの池崎愛里(ダイソー)、この種目の第一人者と言える塩見綾乃(岩谷産業)も年長者としての意地を見せたいところ。昨年の学生チャンピオン・渡辺愛(園田学園女大)も優勝争いに絡みそうだ。 中長距離種目以外で五輪が近いのはレベルアップが著しい100mハードル。12秒台を出すだけでは優勝が難しい状況となり、パリ五輪の参加標準記録(12秒77)をも視野に入れた争いになりそう。 今季、最も調子が良いのは前回3位の田中佑美(富士通)。ワールドランキングでも日本人最上位につけ、セイコーゴールデングランプリでは12秒90(-0.6)で2位を占めた。海外転戦も経験し、「競り合っても自分の走りができる」ようになったと話す。好記録で優勝すれば、さらにランキングが上昇することも見込まれ、現在出場圏内にいる田中にとっては、勝負が重要となる。 日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)。昨年の日本選手権で4位に終わり、ブダペスト世界選手権を逃す悔しい思いをした。冬は腰を痛めたり、体調面で安定しなかったりが続いたが、木南記念で12秒92(+0.2)、布勢スプリントで12秒99(+1.9)をマークした。ワールドランキングを着実に上げているものの、日本選手権前の段階では出場圏外。予選から標準記録突破狙って、攻めた走りをしてくるだろう。 前回優勝者で、2大会連続五輪入りを目指す寺田明日香(ジャパンクリエイト)は、木南記念の予選で出した13秒10(+0.6)がシーズンベスト。「身体が動いていない。練習でできる動きが出ないのが問題」と語るように、今季は走りが噛み合っていない。布勢スプリントなども欠場しており、本番までにどこまで修正できるかがカギとなる。 今季調子が上がっていなかった青木益未(七十七銀行)は残念ながら欠場を表明。代わって12秒台を持つ清山ちさと(いちご)、大松由季(サンドリヨン)、布勢スプリントで13秒00を出した紫村仁美(リタジャパン)、13秒01の田中陽夏莉(富士山の銘水)あたりがメダル争いを演じそうだ。