「毎年、クマとの闘いです」箱根駅伝10区〈踏切で足止め〉悲運のランナーは今→秋田で消防士に「何があるか分からない」震災、クマ出没…故郷を守る日々
就職氷河期…公務員を目指して
田子さんは大東文化大での4年間で3度、箱根駅伝に出場。4年生の頃には実業団からの誘いもあったが全て断り、競技生活に区切りをつけた。 「箱根駅伝が目標だったので、それ以上は、とけじめをつけました。私の世代はいわゆる就職氷河期で、一般企業はほぼ壊滅状態だったんです。私が長男だったこともあり、地元に戻って公務員になろうと。県庁とか秋田県警とか、手当たり次第に受けて今の仕事に就きました」 選んだ道は消防士だった。秋田県鹿角市の「鹿角広域行政組合消防署」に着任し、以来20年以上故郷を守り続けている。現在の役職は「消防司令補」。救急救命士の資格もとり、救急救助にも対応する毎日だ。
高齢化が進む故郷で
「火災と救急救助、交通事故にも対応します。ほぼ全部ですね。小規模な消防で限られた人数しかいないので、全てやらなければならない。普段は静かで平和です。でも高齢化が進んでいる地域ですから、救急搬送される人も高齢者が多い。少しでも命を救うことができればいいなという思いでやっています」 秋田県の北東端部にある鹿角市は、青森県や岩手県に接し、山に囲まれている。人口は約2万7000人で、人口減少や高齢化が進む。冬は積雪も多く、取材に訪れた昨年12月中旬も雪景色が広がっていた。田子さんが担う消防や救急の仕事では、この地域ならではの災害や事故も多いという。 「この時期ならではと言えば、屋根の雪降ろしの事故です。高いところに登って足を滑らせてしまうという事故は毎年必ずあります。高齢で一人暮らしの方も多いので、1人で作業していて足を滑らせ、見つかったのは雪が溶け出した春、ということもあるんですよ。あとは雪道でスリップしての交通事故などもあります」
クマ出没は「普通にあります」
近年、大きな問題になっている野生のクマの出没や、それに伴う農作物の被害も深刻だ。 「クマはしょっちゅう出ますよ。普通にいるというか、共存しているというか、そういう場所です。冬は冬眠していますからそんなに出ないですけど、夏の終わりから冬の始まりまでは凄くてそこら辺に普通にいました。特に一昨年はすごかったです。クマに遭遇したこと? もちろんありますよ。まずは逃げます」 昨年5月にはまさに鹿角市の山林で、タケノコ採りに山に入った男性が死亡。田子さんも救助隊として遺体の回収に向かったが、その捜索の途中で鹿角署の警察官2人がクマに襲われて顔面や両腕などに大怪我を負った事故に直面した。
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