ウォーレン・バフェットは「米国株売り、日本株の買い増し」を進めている?オマハの賢人に学ぶ「いやな相場」のしのぎ方【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
3.日本株に強気のバフェット
■米国株を売却しながら手許資金を積み上げ、ハイテク株を売りつつディフェンシブ株を買う、そんな弱気姿勢を伺わせるバフェット氏が強気なのが日本株です。 ■バフェット氏が伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅の株式を保有していることは広く知られていますが、今後もこうした日本の総合商社や、新たな日本の個別株に更に投資を振り向けてくる可能性が高そうです。というのも、バフェット氏は主に円建て社債の発行により調達した資金で日本株を購入すると明言していますが、2024年には過去最大となる約5,451億円を円建て社債で調達しているからです(図表3)。 〈知らぬが仏?日本の個人投資家の真逆を行くバフェット〉 ■新NISAの開始以降、日本の個人投資家は世界株指数や米国株を積極的に買い進めていますが、オマハの賢人はその真逆となる米国株売り、日本株の買い増し準備を進めているように見えます。こうしたバフェット氏の動きを一つの参考にするならば、これまでの海外株式一本やりの投資方針を取ってきた投資家の方は、日本株への資金分散を検討しても良いかもしれません。 ■2024年の海外投資家による日本株現物の売買は、約9,412億円(11月8日の週まで)の買い越しにとどまっています。もし、バフェット氏が今年調達した資金で更に日本株を買ってくるようならば、海外投資家の注目を集めることとなりそうです。ちなみに、過去の日本株の上昇局面では、海外の投資家が主導することが多かったことを考えると、その影響は決して侮れないのではないでしょうか。 〈バフェットの処方箋、使用上の注意〉 ■こうしたバフェット氏の投資行動を参考にする際に気づいていただきたいのは、具体的な売買の手口もさることながら、投資スタンスやその背景にある考え方のユニークさです。例えば、バフェット氏はコカ・コーラ株を1988年に初めて購入して以降、約36年も保有を続けています。株価は毎日上下しますし、市場は時として大きく上昇したり、数年に1度はめまいがするような下げに見舞われたりすることもあります。そうした値動きから距離を置き、ストレスに動じず、魅力的だと信じる銘柄に集中的に投資し続けることは、並大抵なことではないでしょう。 ■バフェット氏の投資を参考にする上で最も大切なのは、単に「コカ・コーラ株を買う」ということではなく、「信じたコカ・コーラ株を30年間保有し続ける」という投資姿勢にこそあるのではないでしょうか。 〈まとめに〉 「困ったときの神頼み」といいますが、今のように難しい局面では「賢人」とされる投資家の振舞いを参考にするのも「あり」かもしれません。最近のバフェット氏の投資行動を見ると、ハイテク株を始め株式市場全般への警戒感が伺える一方で、日本株については例外的に強気なようです。 バフェット氏の抜群のパフォーマンスの背景には、個々の投資アイディアもさることながら、その個性的な考え方や強い信念があるのではないでしょうか。そう考えると、こうしてバフェット氏の投資行動を見ていくことは、表面的な売買のヒントを得るだけでなく、わたしたちの投資の考え方を見つめ直す良い機会となるのではないでしょうか。 ※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。 ※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ウォーレン・バフェットは「米国株売り、日本株の買い増し」を進めている?オマハの賢人に学ぶ「いやな相場」のしのぎ方【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】』を参照)。 白木 久史 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフグローバルストラテジスト
白木 久史,三井住友DSアセットマネジメント株式会社
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