ウォーレン・バフェットは「米国株売り、日本株の買い増し」を進めている?オマハの賢人に学ぶ「いやな相場」のしのぎ方【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
2.上昇相場で株を売りまくるバフェット
■そんなオマハの賢人は、足元でどんな投資行動をとっているのでしょうか。バークシャー・ハザウェイ社の2024年7-9月期決算を確認すると、株式ポートフォリオの簿価残高は前四半期比約▲104億ドル減の約781億ドル(約12兆円、以下1ドル=154円換算、除く鉄道、公益、エネルギー事業)となる一方、手元資金(現預金と米短期国債の合計)の9月末残高は約3,203億ドル(約49.3兆円)となっており、前四半期末に比べて約18%の増加、前年同期比で約2.1倍に急増しています(図表2)。 ■米国のS&P500種指数は今年だけで約24%、一昨年末から2年弱で約54%も上昇していますが(11月20日現在)、割安株を好むバフェットにとっては、魅力的な投資機会を見つけることが難しくなってきているのかもしれません。 〈警戒感の表れか、ハイテクや景気敏感からディフェンシブにシフト〉 ■次に、米国証券取引委員会(SEC)への申請資料から個別銘柄の動きを見ると、売りで目立つのがアップル(約233億ドル、約3.6兆円)、大手銀行のバンク・オブ・アメリカ(約93.3億ドル、約1.4兆円)、自動車レースのフォーミュラ・ワンの主催会社を傘下に持つメディア企業のリバティ・メディア(約62.6億ドル、約9,600億円)、一方、主な買い銘柄は、ピザチェーン世界最大手のドミノ・ピザ(約5.5億ドル、約847億円)に、スイミングプール用建設資材や交換・補修用品の卸売り世界最大手のプール・コーポレーション(約1.5億ドル、約231億円)となっています(株価はいずれも9月末、1ドル154円換算)。 ■バフェット氏の投資判断はあくまでも個別銘柄の魅力度によるものとされていますが、直近の投資行動からは、ハイテク株の割高感や景気への警戒感が伺われるとともに、経済全般の動向から影響を受けにくいディフェンシブ銘柄や、ニッチな市場の有望企業へ資金を退避させようとする投資スタンスが垣間見られるように思われます。素直に読めば、株式市場全般について弱気な姿勢とも受け取れるため、注意が必要かもしれません。
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