「時短勤務 いつまで」検索する女性たち 令和に見えてくる課題──#なぜ話題
時短利用者がいる事業所の94%が「女性のみ利用」
厚生労働省の調査によると、時短勤務制度利用者がいる事業所のうち94.4%の事業所で利用者は女性のみで、男性の利用者もいた事業所は5.6%にとどまる。男性の育児休業取得率は、2022年で17.1%と年々右肩上がりで、従業員が1000人を超える企業では46.2%になるという。育休を取る男性が増えている動きに対し、時短勤務が女性に偏っている現状について、前出の日本女子大学名誉教授の大沢さんは、こう指摘する。 「育休のように短期間ではなく長期にわたって時短勤務をすると、出世街道から外れて給与面にも影響があるという葛藤があると思われます。時短勤務が長く取れるようになる流れは喜ばしいですが、次の段階として、女性が取るのが当たり前なのではなく、男性にも門戸を開いていく必要があります」 大沢さんは、時短勤務を女性だけが長く取っていることの弊害をこう説明する。 「一見、子育て世代に優しい制度に見えますが、男性と同じように働いてきた女性たちが、出産をしたがために会社から子育てか仕事かという二択を迫られるようなもの。時短をとることで、子どもを産んだら昇進は諦めて、それでも長く働いてねという道ができてしまったのは(この制度が)批判されている点です。 一方で、女性は葛藤を抱えながらも子育てと仕事を両立できる環境はあるともいえるのですが、男性にはその選択をするための後押しがありません。私生活を犠牲にして、悩みながらも、子どもと過ごす時間は少ないままです。家庭で育児をすることはマネジメント能力の向上にもつながります。海外の女性に話を聞くと、キャリアについて相談した際に男性上司の理解がすごくありがたかったという意見が多く、男性が家庭に関心を向け始めると会社が変わっていきます。夫婦間でお互いの働き方について話し合う必要があります」
フルタイムに戻って気づいたことは?
冒頭で、「なんのために働いているんだろう」と時短勤務への悩みを打ち明けてくれた佐藤さんは、時短勤務を1年4カ月でやめ、現在はフルタイムで働いている。 「別のチームのリーダーをやってくれないかと上司から打診がありました。時短に見合っていない勤務内容や労働時間、お給料に対してずっとモヤモヤしていたので、早いタイミングでフルタイムに戻ったのはよかったと思います。上司からは時短でなくても早く帰っていいし、下にフォローする人もつけると言われました。 以前は周囲の雰囲気もよくなかったので仕事も頼みにくく、なるべく自分でしようと思っていましたが、今はメンバーの人柄もよく、責任は重くなったものの、仕事はやりやすくなりました。周りのサポート体制は働きやすさに関わります」 子どもの迎えは保育園で一番最後だというが、フルタイムに戻り、状況は改善したという佐藤さん。働き方がもっと柔軟に選べるようになれば、子育ても仕事もしやすいと考えている。 「私のように出社が必須な仕事は、例えば保育園行事で2時間など、もっとフレックスに時間休が取れたり、途中で中抜けができたりしたらいいと思います。上司は、休んでいいよと言ってはくれるものの、実際に困るのはフォローを頼まれた人なので、必要な部分だけ休みを取れたらと思います。子どもたちの寝かしつけが終わってから仕事を再開することもありますが、今はフルタイムだからと自分を納得させています。部下の女の子から、『佐藤さんが働き方のロールモデルだ』と言われるようにもなりました」