東京で開催中「ポケモン×工芸展」ミュウツーの“表皮”に多数のポケモンを発見!驚きの彫金作品の誕生秘話
金属パーツで“あらゆるポケモン”の遺伝子を表現
自身をポケモン世代だという吉田さんはミュウツーを改めて解釈。「ミュウツーのさまざまな資料をあたる過程で、さまざまなモデルを目にしました。最近の資料ではどちらかというと頭が小さいイメージでしたが、この作品では『ポケットモンスター 赤・緑』の時に公開された、最初のイラストをイメージした色合い、かつ頭が大きめのデザインにしています」と話します。 <写真>鋭く光るつややかな目は七宝焼き。数パターンの試行錯誤を経て、奥行きのある色合いに。これは平安時代末に考案された仏像の玉眼(水晶の眼)にも通じている。
インタビュー時、吉田さんの隣にあったミュウツーは、完成に向けた最終作業の真っ最中でした。彫金という工芸の技術を知らずとも、神々しくも威圧的な姿に魅せられてしまう、そんな存在感。その表面を鱗のように銅製の金属パーツが覆っています。金属の中では銅が好きだという吉田さん。「銅は表面処理の幅が広く、使うほどその良さがわかる素材で、ずっと銅を使っています」 <写真>制作中のミュウツーの腹部。金属パーツはバランスを見ながら全体に折り重ねていく。
ミュウツーらしい薄紫や濃紫の着色は、伝統的な彫金でも目にする、熱や薬品によるもので、表面塗装ではありません。「金属自身が持っているポテンシャルで着色しています。僕が意識しているのは、ムラですね。金属は温度変化で色が変わるので、ひとつのパーツの中でも色が変わるし、同じ色にしているパーツでも、ムラが出ます。塗装は均一化してしまい、こうはなりません。この色表現も金属の面白さだと思うんです」 <写真>さまざまな世代のポケモンがランダムに折り重なるミュウツーの“表皮”。
そして、さらに作品に近づいてよく見ると、その金属パーツのすべてがさまざまなポケモンを象っていると気付かされます。まさにあらゆるポケモンの遺伝子を表面にまとっている! しかも、すべてのポケモンは吉田さん独自の抜き型により打ち抜かれているのです。「これは僕が定抜き鏨(じょうぬきたがね)と名付けている道具で抜いています」 <写真>左から、ポケモン第1世代より「フシギバナ」「イワーク」、第9世代より「ラウドボーン」。「ほのおタイプ」のポケモン「ラウドボーン」は第9世代のゲームで最初に出会うポケモンのひとつ「ホゲータ」の最終進化形で、吉田さんのお気に入り。