人とウイルスの新しい歴史が始まった今知っておきたい「エマージング・ウイルス」とは…科学者・中村桂子「アフリカの事例が翌日アメリカへ飛び火する時代に」
◆象徴的な映画 その裏でウイルスを利用しようとする軍の動き、感染拡大を食い止めようとする医学研究所の研究者、命がけで患者の治療を続ける医療者たちが描かれます。 それぞれの思いと行動がぶつかるなか、収束したと思われた感染症が復活します。ウイルスの変異株が現れたのです。 この映画がまさに象徴的で、今まで足を踏み入れることのなかった熱帯雨林に人間が入っていき、森を壊された動物たちが外に出て来るようになって人間と接する機会が増えています。 また、希少な野生動物を捕らえて商売をする人もいます。 グローバル化する社会では、多くの人が常に世界中を動き回っているので、遠いアフリカで起きた事例が、翌日にはアメリカに飛び火することもありうるのです。
◆野生動物から人間社会へ 野生動物の中にいたウイルスが人間の社会にやってくる。 これまでは、パンデミックまでには至らずに局所で抑え込んできましたが、感染症が発生した国は本当に大変でした。 この20年ほどの間、そんなことが、世界のあちこちで起こっていたのです。 表の3例はアフリカで発生し、流行したウイルスで、特にエボラ出血熱は致死率が高い怖い病気です。 「アウトブレイク」は、これをもとにつくられた映画です。これからも気をつけなければなりません。 ※本稿は、『ウイルスは「動く遺伝子」』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
中村桂子