東京老舗の「絶品そば」ベスト3店…のどごし最強クラスの絶品を《浅草・目白・小川町》で見つけた
自慢の薫る麦を手繰る。蕎麦前を楽しんだあと蕎麦をすする。麦にはいろんな味わい方がある。 【写真】職人技が光るそば屋『李蕎庵』『蕎麦 おさめ』『仁行』 夜は少し背筋を伸ばして気鋭の新店やごちそう感あふれる蕎麦などを。昼は肩肘張らずに味わいたい町蕎麦や立ち食い蕎麦などを徹底リサーチ。時間帯や使い方、さらには気分に合った自在で自由で粋な蕎麦活を始めてみませんか?
小川町『李蕎庵』
ひとりで過ごす蕎麦屋酒もいいけれど、ここには誰かを誘って来たい。というのも鴨焼きや出汁巻きといった定番以外にも、豊洲から毎朝届く鮮魚に酒のアテまでと、つまみは居酒屋くらい気の利いた品揃えで、あれこれ並べて賑やかにテーブルを囲みたくなる。 しかも有名どころから変化球まで日本酒のラインナップの層も厚い上、手頃な価格もうれしい限りだ。そして〆も優秀。 蕎麦粉は自家製粉ではなく挽きムラの少ない製粉所からの仕入れに徹し、細すぎず太すぎず、ちょうどいい塩梅の二八に打ち上げる。 なめらかな麺肌が酒で火照った舌をやさしく撫で、しなやかなコシの余韻を残しながらするりと胃袋まで落ちていく。そんな快感がクセになり、いつまでもすすっていたくなる。
目白『蕎麦 おさめ』
『おさめ』第2章の舞台は山の手、目白。築100年になる一軒家はかつて茶人や音楽家など文化人が家主だったそうで、茶室を利用した個室や坪庭も備えた趣は、蕎麦という日本の食文化を表現する店主、納(おさめ)さんに相応しい新天地だろう。 目当てはもちろん店の代名詞、昔ながらの在来種を使う十割蕎麦だ。全国20ほどの生産者から常時3種を厳選。せいろ、粗挽き、玄挽きとそれぞれ産地と打ち方を変えて供している。手繰れば驚きに満ちた香りと力強い味わい。 「力をいかに伝えるか、バトンを渡された使命感のようなものです」。探求は今なお。つづきの物語も楽しみで仕方ない。
浅草『仁行』
店主の石井仁さんは蕎麦好きには名の知れた人物だ。31年前に『いし井』(神田)を開いた後、移転を繰り返すこと六回。流浪の名蕎麦職人と言われる所以だ。今回、石井さんが選んだのは浅草観音裏の民家。 メニューは全10品の蕎麦懐石のみでその日の献立は食材と石井氏の気分次第だが、何を食べてもべらぼうに旨い。中でも蕎麦寿司は蕎麦と具材、穴子の煮詰めや自家製山葵マヨネーズなどが絶妙のバランス。口の中ではらりとほどけるのも実に粋だ。 そしてもりそばが登場すると、なんと瑞々しい極細の蕎麦かと目を奪われる。手繰ればしなやかなコシ、のど越しの良さに感激。十割とは思えぬ"水腰蕎麦"と呼ぶにふさわしい逸品だ。食べ終えれば身も心も満たされること必至である。 …つづく「東京のうまい「最強の町寿司」ベスト7軒…高コスパ、一貫《110円》からで一見さん、ソロ活でも大丈夫「覆面調査隊が実食」」では、庶民価格の美味しい町の寿司店を紹介します。 『おとなの週末』2023年12月号より(※本内容は発売時のものです)