ピカソの絵画《母性》にガザの母子の写真を貼り付け。英ナショナル・ギャラリーで活動家がイスラエルへの武器輸出に抗議
作品や展示室に損傷はなし
10月9日、イギリス・ロンドンのナショナル・ギャラリーで、2人の活動家が展示中のパブロ・ピカソの絵画《母性(La Maternité)》(1901)の保護ガラスの上に、怪我を負ったパレスチナ・ガザ地区の母子の写真を貼り付け、その後、床に赤いペイントを撒く抗議活動を行った。 複数の絵画メディアによると、作品や展示室に損傷はなかった。 抗議を行ったのは、若者のアクティヴィズムグループ「ユース・デマンド(Youth Demand)」のメンバーである、NHS(イギリスの国民保健サービス)職員ジャイ・ハライ(Jai Halai)と、学生のマンデイ・マラカイ・ローゼンフェルド(Monday-Malachi Rosenfeld)。「ユース・デマンド」は、イギリスとイスラエルの双方向の武器禁輸と、2021年以降にイギリス政府によって付与されたすべての新規石油・ガス採掘権の停止を求める団体で、「ジャスト・ストップ・オイル(Just Stop Oil)」の学生支部のひとつでもある。 ユース・デマンドはアクションを起こした際の動画を公開しており、写真を貼り付けたハライは職員に連行される際「パレスチナに自由を」と叫び、さらに「イギリスは政府は虐殺に加担している。ガザの子供たちは麻酔なしで手術を受け、死んでいる。女性たちは医療措置なしで出産している」「イギリス国民の87%はイスラエルへの武器禁輸を支持している。それなのに政府は武器の供給を続けている」と訴えた。貼り付けられた母子の写真は、パレスチナのジャーナリスト、アリ・ジャドーラ(Ali Jadallah)によって撮影されたもの。 昨年にイスラエルとハマスの戦闘が始まってから10月7日で1年が経過した。大英博物館やメトロポリタン美術館をはじめ、美術館はこれまでも親パレスチナ団体による抗議運動の舞台になってきた。またナショナル・ギャラリーでは先月9月27日にも、環境活動家3名によってフィンセント・ファン・ゴッホの絵画2点が攻撃される事件が起きている。
Art Beat News
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