まさに、かつての常識をひっくり返した…深海底からの「驚きの報告」
熱水噴出孔の発見
ダーウィンは「温かい小さな池」と言い、ホールデンは「紫外線の降り注ぐ熱い希薄なスープ」と言ったように、多くの意見は、水が存在する環境というところは共通しています。生体の組成が海水の組成に似ていることも早くから指摘されていますので、「海」が生命の故郷の有力候補であることは間違いないでしょう。 初期の化学進化研究では、有機物を濃縮したり、水を抜きながらつなぎ合わせたりするには、海岸の波打ちぎわが有利ということがわかり、海岸に近い、光の射す浅い海が生命誕生の場のイメージともなりました。 ところがその後、深海底から驚きの報告がもたらされました。1977年、米国の海洋学者ジョン(通称ジャック)・コーリスらは、潜水艇アルヴィン号で南米エクアドルのガラパゴス諸島沖の深海を潜航中、海底から温かい水が噴き出し、光の届かない暗黒の世界に多様な生物が棲息しているのを見つけました。 1979年には、同じアルヴィン号で東太平洋海膨(かいぼう)を潜航中に、海底から煙突のようなものがそそり立ち、そこから350℃の熱水が噴き出しているのが確認されました。熱水を黒い煙のように噴き出す煙突は「ブラックスモーカー」(記事冒頭の写真)と名づけられました。 生命誕生の場は、このような熱水噴出孔だったのではないかーー発見者たちは直感的に、そう感じました。 生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか 生命はどこから生命なのか? 非生命と何が違うのか? 生命科学究極のテーマに、アストロバイオロジーの先駆者が迫る!
小林 憲正
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