日銀・多角的レビュー①:多角的レビューの取りまとめは、非伝統的金融政策の効果と副作用の両論併記となるか
非伝統的な金融政策について効果と副作用を両論併記か
12月19日に示される「多角的レビューの取りまとめ」は、今まで蓄積されてきたものの集大成となるだろう。従って、新しい意見、結論が打ち出される訳ではなく、サプライズは大きくないと考える。 これまで示されてきた多角的レビューは、25年間続いた非伝統的金融政策の効果と副作用の併記という印象であり、効果と副作用を比較考量した上で非伝統的金融政策全体を評価したものではない。 さらに、非伝統的金融政策の評価とは直接的に関わらない、物価、賃金、中立金利などについての学術的分析も多く示されてきた。12月19日に示される「取りまとめ」もその延長線上となろう。
植田総裁は、非伝統的金融政策の副作用を警戒しているか
2023年4月に多角的レビューを実施する考えが示された当初は、日本銀行はその結果を踏まえて、順次、金融政策の正常化を進めていく、との見方もあった。 しかし実際には、多角的レビューの結果と直接連動する形でなく、2023年7月と10月にイールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化、2024年3月にマイナス金利政策解除、7月に追加利上げが実施されていった。 2024年3月のマイナス金利政策解除時に、日本銀行は短期金利を主たる政策手段とする伝統的金融政策の枠組みへと一気に転換した。物価が上昇し、非伝統的金融政策を続ける環境ではなくなった、というのが表面的な説明ではあったが、それでも非伝統的金融政策に未練がないかのような思い切った決断だった。 この点を踏まえても、植田総裁自身は、長らく行われてきた資産買い入れ策、マイナス金利政策、イールドカーブ・コントロールといった非伝統的金融政策については、その効果には懐疑的である一方、副作用については警戒的な考えを持っていたのではないかと推察される。
副作用よりも効果の分析により重点が置かれたものとなる可能性
しかし、非伝統的金融政策の副作用を強調することは、黒田体制のもとでの異例の金融緩和や植田総裁がかつて審議委員として自身も関与した非伝統的金融政策を否定してしまうことになってしまう。それを避け、日本銀行としての政策の連続性を重視するのであれば、両論併記的なレビューにとどめることは、致し方ない面があるだろう。 さらに実際には、効果と副作用を併記し、非伝統的金融政策全体の明確な評価を避けるだけでなく、日本銀行が進めてきた政策を肯定するために、効果の方をより強調する自画自賛的な分析となる可能性があるだろう。