「独自政策の財源に」ふるさと納税で人口減止めた酪農の町 上士幌・竹中町長
北海道・十勝といえば、NHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」でドラマ設定上の舞台となったことが記憶に新しい。広大な自然を有するこの地域は、撮影ロケ地にもなった。 【動画】返礼品競争が過熱 ふるさと納税発案の福井知事が語る「本来の趣旨」 その十勝地方に、上士幌(かみしほろ)町という人口約5000人の小さな町がある。町面積は約696平方キロで、その約76%を森林が占める農業と畜産の町だ。 この過疎の町は、長らく悩まされてきた人口減少対策に取り組み、人口増加に転じることに成功した。上士幌町の竹中貢(みつぎ)町長は、その要因に「ふるさと納税」があると語る。竹中町長に聞いた。
半世紀減り続けていた人口が増えた
「半世紀にわたって減り続けていた町の人口が、この4年間増え続けている。奇跡的なことが起きている」 現在5期目の上士幌町政を担う竹中町長は、こう胸を張った。 北海道のほぼ真ん中、十勝地方の北に位置する上士幌町は、農業の盛んな過疎の町だ。一面の牧場など「北海道らしい」雄大な自然が広がる。しかし、全国の中山間地や北海道内の他自治体がそうであるように、上士幌町もまた少子高齢化、人口減少の波に飲み込まれていた。
かつて上士幌町は林業の町として活況を呈した。しかし最盛期の1955(昭和30)年に1万3608人だった人口は、1969(昭和44)年に1万人を切り、それ以降、右肩下がりで減り続けた。2014(平成26)年1月末には5000人を初めて割り込み、翌2015年3月末に過去最低の4874人にまで落ち込んだ。 しかし2015年以降、年単位では増加に転じ、2018年4月末に5000人の大台を回復。今年に入って月単位では増減を繰り返しているが、2018年まで人口は4年連続で増加した。 なぜ上士幌町は、人口増加に転じることに成功したのか。竹中町長は、ふるさと納税を原資とした町独自の人口減少対策を実行したことが大きな要因だという。 その前提として、自由度が低くて厳しい地方自治体の財政事情を説明した。 「町づくりをやっていると、地域、地域の課題がたくさんある。ただそれを賄う財源があるかというとかなり厳しい。地方交付税に頼らざるを得ない現実がある。人口約5000人の町で面積約700平方キロの自治体を経営するのは大変な経費がかかる。基礎的な運営で精一杯で、独自の政策を打つことはなかなかできなかった」 こうした背景から、税の格差も含めた都市と地方の格差が課題になってきたという。しかし人口はどんどん減り続けていく。 「そうした町独自の課題に対して、手を打たなければならないというときに、ふるさと納税は紐付きではなかった」 竹中町長は、財源に町が使いみちを決められるふるさと納税を充てることを思いついた。 「ふるさと納税の寄付金が、全国の方々の意に反しない形で町づくりに生かされる。それに使わせてもらうことは理解してもらえるだろうと。町の人口減少問題に思い切り使わせていただいた」