「独自政策の財源に」ふるさと納税で人口減止めた酪農の町 上士幌・竹中町長
子育て・教育に特化、安定財源へ条例化も
戦後の最盛期から3分の1近くまで減少した上士幌町の人口。そして進む高齢化。地方や中山間地の町村が抱える過疎、人口減少をどう克服するかは、上士幌町にとっても大きな課題だった。人口減少は税収など自治体財政に直結する。 では上士幌町はどうやって町人口の減少に歯止めをかけたのか。 竹中町長は「なぜ人口が流出していくのか。なぜ転勤で来る人が単身赴任で来るのか」を考えたときに「安心して子育てや教育が受けられる環境があるかということ。そのことによって若い人が町に来てくれる」のだと思い至ったという。 「そもそも町に仕事はないわけではない。仕事はある。ただ農業を軸にした仕事が多いので、すべての人に合うかは分からない。ただ若者の中には田舎で暮らしたいという人もいるはず。そのときの課題の一つとして、子育てや教育に対する不安がある。その前提でその対策を徹底してやっていこうと考えた」 ふるさと納税を財源に、子育て・教育に特化した人口減少への取り組みがスタートした。 まず子育てに関わる財政的な負担軽減に取り組んだ。2016年4月から認定こども園の利用料を完全無料化したほか、医療費を高校生まで無料にした。しかし、とりわけこだわったのは教育の「質」の部分だという。 「財政支援だけで完結する話ではない。自分の大事な子どもをどう健やかに、そして個性を伸ばしてくれるか。経済的な負担軽減策はそのうちどこの自治体もやってくる。そこで優位性を保つのは難しい」 負担軽減と同時並行して、教育の質と内容を高めることにも取り組んだ。 たとえば、認定こども園では、ネイティブの外国語指導助手と国際交流推進員として2人の外国人に来てもらっている。幼児期から国際感覚をしっかり養ってもらうのが狙いだ。 小学校では、1クラス30人の少人数学級を徹底。小学校入学時のいわゆる「小1ギャップ」に対応するためで、教員も担任業務の担当、TT業務を担う支援教員、専科教諭ら複数人を配置している。 しかし教育政策は成果が出るのに時間がかかり、継続的に実施する必要がある。その財源の制度的な裏付けとして、条例で「ふるさと納税・子育て少子化対策夢基金」を設置。寄付額が急増した2013(平成25)年度に4000万円を積み立てた。 「この条例をつくったのも画期的で、全国で初めてだと思う。ふるさと納税が急に少なくなるような状況にも対応できるように、10年間はしっかり経費を積んで担保する。お母さん方にも安心してもらうような環境を整えている」