「独自政策の財源に」ふるさと納税で人口減止めた酪農の町 上士幌・竹中町長
移住政策にも注力、高齢化率が下がる
合わせて移住政策にも力を入れた。本格的な移住の前に、試験的に短期間住んでみる「お試し住宅」を整備して、1か月から最長1年まで移住体験できる制度を設けた。実際に、2007年からの10年間で75組150人が移住したという実績がある。 「移住定住の取り組みは北海道の中でもトップクラスの実績がある。それだけでなく、働く目的で来る移住者もいる。そして『社会増』(※1)が起きた。『自然減』(※2)を含めても人口が増えてきている。その結果として高齢化率が下がっている」 (※1、※2)…転入者と転出者の差が社会増。出生数と死亡数の差が自然増 2016年の町の人口動態をみると、社会増は転入296人に対し転出224人で72人増えた。高齢化率も2017年4月の35.00%から翌年4月には34.62%と下がり、上昇に歯止めがかかっている。 転入者の世帯主のうち働き盛りの20~40代が占める割合も高い。2016年は84.2%、翌2017年も83.4%と8割以上。世帯数も増加し、2015年の2300台に対して、2019年には2500台の中盤で推移している。 竹中町長は、町でこんな光景を目にしたという。「成人式は、5年前は1学年で40数人だったが、今年の成人式で名簿を見たら70数人になっていた。これは若い人たちが転入しているということ。その転入してきた若い人が、単身で住宅を借りて住み、最初は車が1台だが、やがて2台になることがある」。移住してきた上士幌町で結婚して、家庭を築いたのではと期待する。
寄付してくれた12万人を町の“プレーヤー”に
町独自の子育て・教育政策を実行する財源になったふるさと納税。竹中町長は、ふるさと納税を通した地方と都市部の住民との交流も重視する。上士幌町では「ふるさと納税大感謝祭」と銘打ち、首都圏の寄付者らを招いて東京で特産品の試食会などを開く試みを行っている。 「都市と農村、地方とをつなぐ大きな役割が、ふるさと納税にはある。昨年も12万件ほどの寄付があった。その12万の人たちとどんなふうに向き合うかが大切」 「関係人口」という言葉を引き合いに、そうした寄付者たちが、町への関わりをより強めたくなるような関係性を持ちたいと語る。関係人口とは、移住者である「定住人口」でも、観光に訪れる「交流人口」でもなく、多様な形で地域に関わる人たちのことをいう。 「『関係人口』という言葉があるが、私はかねてからそういう人たちを『応援人口」というふうに思って仕事をしている。直接の町のプレーヤー(定住人口)は5000人だが、12万人が“スタンド”で上士幌を応援してくれている。そういう人たちとの縁が深まって『上士幌のプレーヤーになりたいよ』と、移住や定住、一時居住でもいいので、そういう思いが深まってくれることを期待したい」