最後の福岡マラソンで日本人トップを奪った“新星”細谷恭平の可能性とは…箱根5区“山登り”で鍛えた努力のランナー
黒崎播磨のマラソン練習はオーソドックスだというが、大会10日前には20km走を実施している。 「余裕を持って、いかに速く走れるのか」(澁谷監督)をテーマにしており、今回はレースと同じ1km2分58秒ペースで行った。細谷の動きが良すぎたために、澁谷監督は18kmでストップをかけたという。その微調整がうまくハマった。 「マラソン経験が浅いので、よくわからないですけど、監督の絶妙な調整メニューをやったのが大きかったと思います。僕はセンスで走るようなタイプではありません。気持ちで押すじゃないですけど、ひたすらガムシャラに前を追いかけるスタイル。いつも通 りのレースができたかなと感じています」(細谷) ただし、優勝のチャンスを逃がして、「集団のなかでウロウロして、微妙なペースの上げ下げに対応してしまったこともあり、後半に脚を残せなかった」と細谷は反省点を口にした。 それでも伝統の福岡国際で日本人トップに輝いたことで“日本代表”への意識はさらに高くなったという。 「パリ五輪に向けて、MGCの出場権をとれたことは良かった。前回のびわ湖のように1km3分ペースでは狙えるタイムに限界がある。日の丸を背負うためには、1km2分58秒で押していくのが必須条件。終盤どこまで上げられるのかを意識して、今後は取り組んでいきたいなと思います」 日本陸連の瀬古利彦副会長は、「びわ湖の2時間6分台がフロックではないことを見たかった。本当の実力であることを確認できたのが良かった」と細谷を評価。テレビ解説を務めた大迫傑さんも、「チャレンジの積み重ねが次の記録を生むと思うので、今回2分58秒ペースで行ったという意味は大きいと思います」と日本人選手たちの果敢な挑戦に“希望”を感じていた。 東京五輪で6位入賞を果たした大迫さんは30歳でシューズを脱いで、同い年の設楽は今回振るわなかった。最後の福岡では、びわ湖毎日マラソンで2時間4分56秒の日本記録を打ち立てた鈴木健吾(富士通)と同学年の26歳・細谷が日本人トップ。2024年パリ五輪に向けて、日本マラソン界の勢力図が大きく変わろうとしているようだ。 (文責・酒井政人/スポーツライター)