親父が生きていたら一緒に酒を飲みたかった…ヘビースモーカーで本好きの父の面影を銀シャリ橋本が語る
僕の家にはダイニングキッチンと呼ぶにはおこがましい、台所のある狭くて昭和的な部屋にテレビがあった。そのテレビは少し小さめで、メインのテレビはリビングにあったから、あくまで2台目のテレビといった感じだった。 家の構造的に、ダイニングキッチンの奥に洗面台とお風呂があったので、お風呂に入るためには必然的にダイニングキッチンを通らなければならない。中学一年生くらいの頃、親父に「早く風呂に入りなさい」とよく怒られていた。 最初は軽めに「風呂入りなさい」と言われる程度なのが、夜の11時を過ぎてくるとだんだん語気が強くなってくる。その理由はしばらくして分かった。親父は、夜11時半から始まるローカルネットのエッチな番組を見たかったのだ。ダイニングキッチンのテレビで見たいがために、早くお風呂に入って欲しかったわけだ。 その番組の放送中に、僕がお風呂に入ろうとダイニングキッチンを横切ると、すぐさまチャンネルを替えたことがあって、さすがに子供の僕でも気が付いた。わかりやす過ぎるぞ親父! でも、思春期を迎えていた僕は、同じ男としてその気持ちと行動は理解できた。あまりにもわかりやすいが、それもまたチャーミングやなぁと。 照れ臭いのか、僕や妹をわかりやすく可愛がることはしない人だった。 僕がまだ幼稚園の年長くらいで、親父が仕事終わりにお酒を飲んで、帰宅が遅くなった時のこと。スーツ姿のまま、おかんと川の字で寝ている僕と妹に近づいてきて、僕らの頭をなでて頬に頬ずりをする。もちろん愛情表現なのは子供ながらに理解していたが、なんせタバコとお酒と加齢臭も相まってなかなかの匂いを放ってくるのだ。しかも近距離でだから厳しいものがある。でも、拒否したらきっと怒られるから、僕は寝たふりをしてやり過ごす。 妹は僕よりもピュアというかアホというか正直すぎるので、寝たふりをする技を使わずに「もー、お父さんくさい~!」と本音を言ってしまう。すると、傷ついた親父にプチ逆ギレされるというのがいつものパターンで、「なぜこいつは学ばないんだ」とつくづく感じたものだ。