使えなくてイライラ 「新500円玉」対応の自販機が増えないワケは? 飲料大手&業界団体に聞く
最新の偽造防止技術が施された500円玉が2021年から流通しており、この硬貨は「新500円玉」と呼ばれています。ただ、新500円玉を飲料の自動販売機に入れると釣り銭の返却口に戻ってしまうことが多く、新500円玉が使用可能な自販機は、少ないのが現状です。 【画像】ひと目で分かる! これが新500円玉&旧500円玉の違いです 新紙幣も なぜ新500円玉に対応した飲料自販機の設置が進まないのでしょうか。日本銀行が新紙幣の発行を7月3日から開始しますが、それにより、新500円玉に対応した自販機の設置台数が増える可能性はあるのでしょうか。 新500円玉の対応状況について、自販機の製造事業者の業界団体である、一般社団法人日本自動販売システム機械工業会(東京都新宿区)のほか、清涼飲料の製造、販売を手掛ける、キリンビバレッジ(東京都中野区)にそれぞれ聞きました。
硬貨選別機の交換にコストがかかる
一般社団法人日本自動販売システム機械工業会の担当者に聞きました。 Q.そもそも、新500円玉に対応した飲料自販機の割合について、教えてください。また、新500円玉に対応した自販機が増えないのはなぜなのでしょうか。 担当者「新500円玉に対応した飲料自販機の割合は、現状でおおよそ2~3割です。こうした自販機が増えない要因として、コストの問題が考えられます。新500円玉の発行以降に製造された自販機には、新500円玉に対応した硬貨選別機が取り付けられていますが、それ以前に製造された自販機にはありません。 新500円玉の発行以前に製造された自販機については、最新の硬貨選別機に取り換えることで、新500円玉の使用が可能となりますが、その場合、一定のコストや手間がかかります。これまでのところ、飲料メーカーや自販機のオーナーが、自販機メーカーに対し、新500円玉に対応した硬貨選別機の交換を依頼するケースは、それほど多くないのが現状です」 Q.では、新500円玉に対応した自販機が増えるのは、いつ頃になる見込みなのでしょうか。新紙幣の発行が開始される7月以降に設置が進む可能性はありますか。 担当者「日本銀行が7月3日に新紙幣の発行を開始することから、7月以降に新500円玉に対応した自販機が増えるかもしれません。自販機の内部では、紙幣の識別機と硬貨の選別機が別々に設置されており、飲料メーカーや自販機のオーナーが、新紙幣に対応した識別機に取り換える際に、同時に硬貨の選別機も変更する可能性が考えられるからです。 また、当然ですが、新500円玉の流通量が増えれば、新500円玉に対応した自販機の設置台数も増えていくと思います」 Q.ところで、飲料メーカーや自販機のオーナーが、新1000円札に対応した識別機に交換する動きは、広がっているのでしょうか。また、新1000円札の対応と新500円玉の対応のどちらを優先する傾向にあるのでしょうか。 担当者「一般論として、紙幣は硬貨よりも早期に新しいものに切り替わるため、その分、早めに対応しなければならない可能性が高いです」 Q.ちなみに、飲料の自販機は、5000円札や1万円札が使用できないケースが多い印象がありますが、なぜなのでしょうか。 担当者「飲料用の自販機の場合、性能上、紙幣で釣り銭を出すことができないからです。また、5000円札や1万円札に対するお釣りを硬貨で出そうとすると、多くの枚数が必要となり、すぐに釣り銭切れを起こしてしまいます。そのため、飲料用の自販機は、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉、1000円札のみに対応しています」