なぜ「犬は飼い主に似る」のか、見た目だけでなく性格も、科学が出した答えとは
飼い主を信頼するように生まれるイヌたち
このレビュー研究の著者は、研究にいくつかの限界があることも指摘した。研究に参加したイヌと飼い主の数が比較的少ない点や、多くのイヌが純血種だったことなどだ。研究者たちは、世界的により一般的な雑種犬に関するデータをより多く必要としている。 さらに、飼い主のバイアスも影響している。イヌの性格を評価する標準的な方法がないため、研究者は飼い主に自分のイヌを評価してもらうしかなく、それは人間の家族を客観的に評価するのと同じくらい難しい。なお、飼っているイヌがいい子かどうかではなく、イヌが特定の状況でどのような行動を取るかについて、より明確な質問をすれば、このバイアスには対処できる。 ハンガリーのエトベシュ・ロラーンド大学(ELTE)理学部の研究員で、イヌの行動を研究しているボルバラ・トゥルチャン氏によれば、人間がイヌに影響を与えるのは驚くことではない。イヌの性格の約3分の1が遺伝的である一方、子イヌの頃から共に過ごしていれば、残りの3分の2は飼い主によって作り出される環境に左右されると氏は考えている。 また、イヌは飼い主を信頼するように生まれてくる。なぜなら、何万年にもわたる家畜化により、人間に深い愛着を持つようになったからだ。 「母子間の愛着と同じですが、イヌは人間に対してその愛着を形成します。これがイヌと人間のすべての社会的関係の基盤になっています」と、トゥルチャン氏は言う。子どものように、イヌは飼い主をお手本とし、「飼い主の方が賢いと無条件に信じる」のだ。なお、氏は今回のレビュー研究には関与していない。 例えば、「トラックが来てとても大きな音がする場合、イヌは飼い主の方を見るでしょう。飼い主が気にしなければ、イヌも気にしないことを学ぶのです」とトゥルチャン氏は言う。
イヌが最高の状態でいられるように
ベンダー氏は、自分の研究が、特に災害救助犬や警察犬、介助犬など、公共の安全に不可欠な役割を果たす動物をより深く理解する助けになるよう望んでいる。 結局のところ、飼いイヌとの関係を向上させたいと考える飼い主への重要な問いは「イヌが最高の状態でいられるように、どのように接するべきか?」ということだとベンダー氏は言う。 この課題は私にとっても非常に重要だ。最近、私と夫は「ミロ」という混血の子イヌを引き取った。ミロはフェッチ(イヌ用の木製おもちゃ)と、毎日の散歩が大好きだ。 また、黄褐色の短い耳は、私の今の髪型に少し似ている。米ロサンゼルスの保護施設や非営利団体にいるイヌたちの写真を何百枚も見た末に、ミロを選んだのはそのせいかもしれない。 「そっくりコンテスト」で私とミロがいつか優勝しようがしまいが、ミロへの接し方がミロの行動に大きな影響を与えることを私は肝に銘じている。そしてもちろん、ミロがどのような行動をとろうとも、ミロはいつでも私の一番かわいい子だ。
文=Tara Law/訳=杉元拓斗