加齢性骨変化の予防が認知症予防になるのはどうしてか?【正解のリハビリ、最善の介護】
認知症を予防するには骨の加齢性変化にもしっかり対策することが大切で、50歳以降は関節可動域を保つストレッチ運動と筋肉トレーニングを継続する「酒向メソッド」が有効です。 膝痛とオサラバ!治療最前線(4)炎症の原因物質は進行に伴って減少し鎮痛剤が効きづらくなる 加齢性の骨変化で代表的なものは、①骨粗しょう症②変形性関節症③変形性脊椎症による脊柱管狭窄症で、今回は②と③についてお話しします。 ②変形性関節症は関節の軟骨がすり減り、関節が炎症を起こした状態です。痛みや腫れ、違和感、水のたまりなどの症状が現れます。関節の酷使、肥満による体重負荷、ケガなどによって生じますが、最大の原因は加齢です。炎症は、股関節、膝関節、足関節、肩関節、肘関節で起こります。 関節の酷使を避けて安静にしたり、薬剤療法、装具や杖の使用などで関節を整えて治療します。しかし、痛みや変形が強くて毎日がつらい場合には、傷んだ関節の表面を取り除き、人工関節に置き換える手術で痛みを改善させる治療が当たり前の時代になりました。 ただ、変形性関節症は骨粗しょう症と同じように、50歳からの体重調整と筋肉運動訓練で増悪を予防できます。体重は「身長-(100~110)キロ」を目安に管理する必要があります。また、変形性関節症は膝関節と股関節に進行しやすいため、下半身を鍛える筋肉トレーニングとストレッチでたくましいお尻と太ももを維持することが重要です。高重量を押し上げる下肢伸展訓練のレッグプレスやスクワット、ダンベルを引き上げる訓練のデッドリフトが代表的です。また、踵上げ訓練(カーフレイズ)などのふくらはぎの運動は下腿の浮腫を予防するのに最適です。これらはセラピストやインストラクターに計画してもらうと安全で簡単に導入できます。 ■「脳筋連関」によって脳の萎縮を防ぐ ③変形性脊椎症も加齢により生じます。背骨の骨と骨の間にある軟骨でクッションの役割をする椎間板と、後方にあって脊椎の骨同士をつなぐ左右一対の椎間関節が衰えて変性して起こります。 加齢などにより椎間板が変性すると、その異常な動きを止めるように骨棘(骨のとげ)が形成され、この骨棘が神経を刺激したり圧迫するなどして痛みが生じるのですが、こちらも50歳からの筋肉運動訓練で骨変形や変性の進行を予防できます。 変形が高度に進んで骨棘が形成され、椎体同士が架橋される椎体間架橋形成などを起こすと、慢性の疼痛や可動域制限が生じ、脊髄の神経根症状(その神経根が支配している部位に出る痛み、異常感覚、筋力低下などの症状)が現れます。さらに、椎体変形や周囲組織の増殖で、変性脊柱管が狭窄化すると「脊柱管狭窄症」と呼ばれ、脊髄や馬尾(脊髄の下端から下に向かってのびる神経の束)の症状を発現します。 頚部脊柱管狭窄症では、頚部痛をはじめ、手足にしびれや痛みが現れ、手足が動きにくくなります。中でも下肢に脱力が生じたら、急いで脊柱管狭窄を開放する手術治療が必要です。遅れると、転倒して頚髄損傷を招く危険があります。最近は90代でも安全に手術治療が行われて、劇的に改善します。 腰部脊柱管狭窄症では、下肢の痛みやしびれ感、脱力、残尿感や便秘が現れます。こちらも下肢の脱力が生じたら、迅速な手術治療が必要です。また、長く歩くと下肢痛が出るため、休みながら歩くことを繰り返す間欠性跛行も手術適応になります。 このように、加齢性骨変化は、痛みやしびれだけでなく、四肢の動きを低下させ麻痺を生じます。その結果、孤立化することで認知機能の低下を招くのです。 これを予防するには、50歳以降に「筋肉革命95(95歳まで非介護)」の取り組みを始めることが有効です。筋肉をしっかり鍛えることで骨も強くなります。筋肉と骨を維持して、適度な就労、交流、社会活動や歩行を続けると、脳神経に刺激が送られて脳の萎縮や認知機能の低下を防ぐことにつながります。これが「脳筋連関」です。 80歳で60代の筋肉と骨を、90歳で70代の筋肉と骨を保ち、80代でも就労を楽しめ、95歳まで非介護であることが目標です。これは、一人一人の生活習慣に加えて、パーソナルジムを上手に利用して健康を管理する筋肉革命95によって可能になります。