なつかしくて新しい人気の駄菓子屋「まぼろし堂」が子供たちに伝えたいこと
そうした思いが、まぼろし堂の開店につながった。薄利多売で商売としてはかなり厳しいというが、現在の年商は約500万円という。地元の子どもたちも多数集まるほか、広い敷地を利用してミニコンサート的なイベントや、プロレス団体と協力してのプロレス大会など、これまでにさまざまな自主イベントも催してきたそうだ。その都度、おもに千葉のローカルメディアなどに情報を売り込み、それなりに露出してきたのだとか。商売の秘訣を、成田さんに聞いた。
「まぼろし堂」が子供たちのためにできること
「駄菓子自体はスーパーやデパートにもあって、実はありふれています。大事なのは、駄菓子それ自体ではなく”場所”を提供することです。庭があって、敷地があって、屋根があって。子どもが見ても懐かしいって思える建物の中で、スーパーで売っているのと同じ駄菓子を食べても、やっぱり味が違って感じられると思うんですよ。そういう楽しい場所をいかに作り上げるか、っていうのがこの商売のコツだと思うんです」 そしてもうひとつの秘訣として成田さんは、子どもたちとのコミュニケーションをあげた。 「昔は叱ってくれるおじちゃんおばちゃんが近所にいっぱいいたけど、いまはコンビニに行っても、子どもにも『いらっしゃいませ』『ありがとうございました』っていうだけのつながりしかない。ウチには、子どもがくれば『おかえり』とか『よし、それ安くしてあげようか』とか、積極的にコミュニケーションとってくれるおばちゃん(やっちゃん)がいるのも大きい。子どもたちも、人の温もりがわかるんです」
続けて、自らの子ども時代を振り返って熱い思いを語る成田さん。 「昔は子どもに何かを提供してくれる大人が多かった。いまは意外と大人同士で楽しんでいるところが多いように感じます。子どもに何か提供してあげたり思い出を残してあげることが大人じゃないかなって。それがまぼろし堂でできていることが嬉しいです」 「まぼろし」とは、たちまちのうちにはかなく消えてしまうもの。子どもでいられる時間は、たしかにまぼろしのように短いけれど、子どものころ見聞きし体験したことは一生残る。 (取材・文・撮影:志和浩司、取材協力:C-Style<八剱咲羅、潮干狩鯏>)