元うたのおねえさん・小野あつこ 沖縄の祖母が「戦争は怖い」以上のことを語らなかった理由 子どもたちにつなぐ思い #戦争の記憶
「沖縄の祖母は10代で戦争を経験しているのですが、祖母と戦争の話をしたことはほとんどありませんでした。『怖くて話したがらない』と母も言っていましたし、私も子どもながらに、聞いちゃいけないことなんだろうなと感じていたんです」 NHK Eテレの『おかあさんといっしょ』で第21代うたのおねえさんを務め、卒業後も全国の子どもたちに歌を届ける活動をしている小野あつこさん(32)。母親の故郷・沖縄で生まれ、毎年必ず祖父母の家を訪れていた小野さんが、語られていない真実を知ったのは祖母が亡くなった後だった。戦争を知らない世代が、次の世代につないでいきたい思いとは──。8月15日の終戦の日を前に小野さんに伺った。(取材・文:内橋明日香/撮影:遠藤宏/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
たくさんの親戚に囲まれて育った幼少期
『おかあさんといっしょ』の第21代うたのおねえさんとして6年間活動した小野あつこさんのルーツは、沖縄にある。小野さんは、今からおよそ33年前に小野家の長女として母親の実家がある沖縄で生まれた。
「小さい頃の写真を見ると、親戚じゅうの大人に可愛がってもらって育ったんだなと感じます。母は5人きょうだいで、祖母は7人きょうだい、祖父も10人きょうだいなので、沖縄には親戚がたくさんいるんです」 小野さんの母親の実家は、沖縄本島の中央部に位置する金武(きん)町にある。学校の長期休みには必ず祖父母の家を訪れた。
「夏休みと、小さい頃は春休みにも帰省していました。祖父母と一緒にドライブに行ったり、田んぼに行ってシラサギを探したり。魚釣りや虫捕りもしました。でもやっぱり沖縄の思い出といえば、大勢の親戚で集まることですね。年に1回、沖縄の旧盆に合わせて必ず帰省していて、みんなで集まってご先祖様の思い出話をしながらにぎやかに宴会をする、そういう文化の中で育ってきました。春のお墓参り、清明祭(シーミー)のときも、お墓の掃除をしてからその場で、沖縄のお墓参りには欠かせないお供えの重箱料理を食べたりしました。丸1年行けなかったのはコロナ禍の年が初めてでした」