元うたのおねえさん・小野あつこ 沖縄の祖母が「戦争は怖い」以上のことを語らなかった理由 子どもたちにつなぐ思い #戦争の記憶
戦争を知らない世代が考える「自分の役割」
毎年夏は、沖縄で過ごした楽しい思い出がある季節であるとともに、テレビからは広島・長崎の原爆投下や終戦の日についてのニュースが流れる。戦争の悲惨さと、大好きな沖縄への思い。小野さんは仕事で子どもたちに接する機会が多い自分にできることは何か、考える機会が増えたという。
「沖縄の好きな言葉がふたつあります。ひとつは『命(ぬち)どぅ宝』。これは『命こそ宝』という意味で、人の命はなにものにも代えられないということ。ふたつ目が、『いちゃりばちょーでー』で、これは『一度会ったら皆きょうだい』。こんなに素敵な言葉が生まれる場所で、80年前に悲惨な地上戦があり、米軍の占領下に置かれました。今も住民の方は基地と共存しています。戦争を経験した祖母と一緒に幼少期を過ごしてきて、その孫やひ孫にあたる世代と今、関わらせていただいている人間として、皆さんの思いを受け継いでいくためにどのように力になれるんだろうと思いますね」 小野さんは、歌い手としての自分の役割について最後にこう話した。
「歌を仕事にしているので、もちろん楽しんでもらうことが一番にはあるんですけど、それを聴いてくれる子どもたちの年齢は、心の発達に大事な時期だと思っています。歌わせていただいている曲は、直接的に戦争や平和をテーマにしたものではなくても、人の優しい気持ちを歌った曲など、生きていく上で大切なことを伝える内容の歌詞がとても多いです。 豊かな心が育まれる時期の子どもたちに、音楽にのせて言葉やメッセージを届けられる仕事をしている身として、大きなやりがいとともに責任も感じています。すべての人と仲良くしましょうということは難しくても、人はそれぞれ違うことを認めて、考えて、想像して。人と意見の合わないときには、どう相手を認めていけばいいのか考えてもらうきっかけを作ることは私にもできるかもしれません。子どもたちの未来に、優しい世界が広がっていったらいいなという思いを込めながら、これからも歌い続けていきたいです」 --- 小野あつこ 1991年生まれ。4歳からピアノを始め東京都立芸術高等学校音楽科に入学。ピアノ専攻卒業。大学入学時に声楽に転向。東京音楽大学音楽学部音楽学科声楽専攻(声楽演奏家コース)、同大学院音楽研究科声楽専攻独唱研究領域修了。中学校・高等学校教諭専修免許状取得(音楽)。大学院卒業と同時に、NHK Eテレ『おかあさんといっしょ』第21代うたのおねえさんとして2016年4月から6年間、番組に出演。卒業後はうたのおねえさん時代から大切にしている「近所のおねえさんのような親しみやすさ」を大事に子ども向けの活動を続けながら、「食」に関する勉強をするなど仕事の幅を広げている。沖縄県金武町観光大使、海上保安庁118番イメージキャラクター。8月25日に岡山県倉敷市民会館にて開催の親子で楽しめる歌とダンスのコンサート、『はじまるよ!あつりさとチョッピーの森』に出演予定。