日本の食文化と選りすぐりのお茶 シェフの感性がちりばめられた 唯一無二のデザート表現「茶湊流水」
その瞬間にその場でしか味わえない、作りたてのおいしさを味わうというデザートの醍醐味。その魅力を存分に堪能できる、デザートコースを提供するお店が増えています。 【画像】この記事の内容を画像を見る(15枚) カウンターに腰かけ、シェフの言葉に耳を傾けながら目の前で仕上げられるひと皿、ひと皿に胸を高鳴らせ、香りや温度、音を感じ、味わいを楽しむひとときは、まさに至福の時間。 とっておきのデザートコースを味わいに、いざ!
パティシエの技術と日本の食文化が融合
日本茶と発酵を織り交ぜたデザートコース「茶湊流水」でいぶし銀のような存在感を放っているのが、2022年、東京・神楽坂にオープンした「VERT」です。 「『茶湊流水』は、行雲流水(物事に執着せず、自然の成り行きに身を任せることを意味する言葉)になぞらえた名前です。湊は人、物、事、文化が集まる場所。それらを自然体で受け入れ、お茶をもっておもてなししたいという思いをこめて、スタッフと一緒に名づけました」と話す、オーナーシェフの田中俊大さん。 パティシエとして活躍してきた田中さんがお茶との魅力に開眼したのは、6年ほど前。自身の故郷である福岡県の山科茶舗のお茶に出合い、そのおいしさや繊細な味わいと甘みとともに、さまざまな品種があることや味の幅の広さに衝撃を受けたといいます。 そして、「VERT」をオープンし、デザートにお茶を合わせるのではなく、お茶とデザートが「2つでひとつ」のおいしさを完成させるという、研ぎ澄まされた感性と独自性が光るデザートコース「茶湊流水」をスタート。デザインをそぎ落とし、黒と緑、金で統一された店内は、まるでモダンな茶室のようです。 自らの足で茶畑を訪れて生産者と交流し、五感で感じた茶畑の情景をデザートコースに落とし込むという田中さん。そのお茶と合わせて、デザートに使用する旬のフルーツも日本各地から上質なものを厳選しています。それらの自然な甘みや旨み、香り、酸味などを引き出すために使われているは、発酵の手法。 お菓子やデザートには砂糖を使うことが常ですが、「素材の味わいを生かしたいと思うとき、砂糖の甘みは邪魔になります。お茶の風味は繊細で甘みもあり、フルーツもそもそもそれ自体が甘いのに、デザートでその甘みを生かせないのはどうなんだろう、と思ってしまって。発酵をよく知る料理人から習得し、随所にそれを取り入れてコースを組み立てています」と、語ります。 内容は月ごとに替わり、目の前で淹れられるお茶とつくり上げられるデザートを、五感で堪能できます。2024年5月のコースを見ていきましょう。