日本の食文化と選りすぐりのお茶 シェフの感性がちりばめられた 唯一無二のデザート表現「茶湊流水」
◆発酵枇杷 発酵大和橘 HERB STAND・カキドオシ、やまとう栗原園・金谷緑 高梨茶園・八重桜 パインアップル
コースのなかで必ず登場するのが、温かいデザート。衣をつけて揚げたフレッシュな長崎県産枇杷のなかには、発酵させた無加糖の枇杷が詰められ、驚くほどの甘みと果実味が広がります。 その上にフレッシュなビワとカキオドシ(シソ科のハーブ)をあしらい、枇杷の種を煮出したソースとバナナの葉のオイルを添えて。八重桜のたおやかな香りとパイナップル果実味や酸味、甘みを加えた埼玉県狭山市「やまとう栗原園」の和紅茶が、甘やかに調和します。 「『枇杷は香りが弱い』と言われるので、枇杷の香りを伝えたくてつくりました。おそらく、日本一枇杷が香るひと皿だと思います」と、田中さん。
◆マルヒ製茶・MB209 発酵ルージュロワイヤル 発酵龍眼 桜桃 松ぼっくり
続いて登場したのは、ルージュロワイヤルという品種のバラと松ぼっくりを乳酸発酵させて酸味を引き出し、発酵させた竜眼のエキスを加えたスープに、発酵させた竜眼、山形産サクランボを加え、蒸し焼きにしたひと皿。 イチゴのような香りを持つ静岡県磐田市「マルヒ製茶」の和紅茶に、発酵させたバラを加えたグラニテをかければ、サクランボや竜眼の果実味に支えられ、気品あるバラの香りが豊かに広がります。
◆辻喜・碾茶あさひ Heart&Berry・発酵とちあいか クレソン マスタード◆池乃屋園・棒焙じ茶 吉田茶園・藪北実生 ジュニパーベリー カリン インカインチ
表面を覆うクレソンと松の実のソースの鮮やかな緑に目を奪われる、グラス仕立てのデザート。ソースの下から、発酵させたイチゴ「とちあいか」のゼリーと、昆布締めにしたセミドライのイチゴ「とちあいか」が現れ、イチゴの旨味が口いっぱいに。つぶつぶとしたマスタードがアクセントを添えます。 合わせるお茶は、埼玉県入間市「池乃屋園」の棒焙じ茶に、苺と相性のよいジェニパーベリーとインカインチ(南米アマゾン周辺で収穫されるナッツの一種)、カリンの酵素シロップを加えて。棒焙じ茶の香ばしさとジェニパーベリーのキリリとした香りが、クレソンの苦みともよく合います。
◆高梨茶園・北命 池乃屋園・新芽 神田豊島酒造・みりんMe 発酵メロン 米麹、高梨茶園・藪北 HERB STAND・唐松新芽
コースの終盤には、あんみつも! アイスクリームには、神奈川県秦野市「高梨茶園」の製茶前の茶葉「北命」が使われ、青々しい強い香りが口いっぱいに。寒天には、その裏手にある放棄茶園(管理が行われず放置された茶園)の枝を燃やした香りがつけられています。 そして、白玉にはその畑の土を練りこみ、茶葉の新芽の素揚げを添えて、茶畑の香りとともに。あんこの代わりに添えられているのは、ほんのり土の香りとスモーキーさを漂わせる北海道産の黒豆です。 下には米麹とともに発酵させたメロンと米麹が敷かれ、「北命」が持つメロンのようなニュアンスとリンクします。これに寄り添うのが、青っぽさを漂わせるカラマツの新芽と「高梨茶園」の藪北の和紅茶を合わせた昆布茶。茶畑の風が体を吹き抜けていくようなマリアージュに、心が揺さぶられます。