ゴーンのツケはいまだ回収できず…日産が「ホンダ主導の統合」を余儀なくされたワケ
● ホンダと日産が統合検討へ 日産は業績悪化で窮地 12月18日の未明、日本経済新聞デジタル版が特報として「ホンダ・日産が統合へ 持ち株会社設立、三菱自の合流視野」との一報を流した。同じく18日付朝刊では、1面トップで「ホンダ・日産統合へ」との大見出しで、「ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入る」と報じた。これらによると、両社は持ち株会社を設立し、傘下に両社がぶら下がる形で調整、将来的に三菱自動車が合流するという。 24年3月の「ホンダ・日産提携検討」という発表に始まり、8月には次世代技術や車両の相互補完にまで踏み込んだ協業の覚書を締結。その際には、戦略的パートナーシップ検討の座組みに三菱自動車工業も加わることも発表されるなど、着々と両社の連携は深められてきた。 それが、ホンダ・日産の経営統合にまで一気に大きく踏み込む議論に発展することになった。ホンダの三部敏弘社長は、メディアの取材に対し「あらゆる可能性を検討している」とコメントしている。ただし、8月の会見でも「提携によるスケールメリット、コストダウンを生かしていく。資本関係の可能性も否定しない」とは語っていた。 週明けの23日には、両社は経営統合に向けた協議に入るが、なぜホンダと日産が経営統合にまで踏み込もうとしているのか。 まず一つ言えるのは、特に日産にとっては、今期に入ってからの大幅な業績悪化による“苦境”が大きな要因だということだ。
日産の25年3月期の連結業績は、この上半期で実質的に赤字に陥っており、19年12月に内田誠社長が就任してから5年間の“経営通信簿”は結果として“不合格”となっている。その結果、内田社長就任後に実施した生産能力20%削減などに続き、またしても世界生産能力2割削減と9000人の人員削減という大リストラの発表に追い込まれるなど、経営は窮地だ。 さらに、ダイヤモンド編集部の特報によると、両社が経営統合に向けた協議に入る動きのきっかけとなったのが、台湾EMS企業の鴻海精密工業(ホンハイ)による日産買収の仕掛けのようだ。 ホンハイには、EV事業の最高戦略責任者(CSO)として、元日産副COOで日産と因縁のある関潤氏が所属する。ホンハイは、関氏が前面に出て水面下で動いており、またアクティビスト(物言う株主)の旧村上ファンドが日産株を巡って活動するなど、日産を取り巻く情勢は複雑化している。 ここで、改めて日産の業績悪化の経緯を振り返っておきたい。 そもそも、19年12月に就任した現社長の内田氏は、当時、ゴーン氏や西川廣人前社長らの辞任によるゴタゴタの中で抜てきされた“ダークホース”的な存在だった。 日産は当時、20年3月期決算で6712億円もの赤字を計上するなど、経営は不振。業績復活は内田社長に課された急務だった。内田社長は就任時、「強い日産にできないときは、すぐクビにしてもらってもいい」と、日産再生への強い覚悟を語ったほどで、20年5月には、構造改革の中期経営計画「Nissan NEXT」を発表する。 その後、「Nissan NEXT」は、一定の成果を収め、最終年度である24年3月期にグローバル販売344万台、営業利益5687億円(営業利益率4.5%)、当期純利益4266億円を達成した。内田社長も「事業構造改革が進んだ。営業利益率5%以上の目標に対し4.5%にとどまったが、新中計でグローバル販売100万台増加と営業利益率6%以上を目指す」と胸を張った。