ゴーンのツケはいまだ回収できず…日産が「ホンダ主導の統合」を余儀なくされたワケ
また、ソニーとのBEV共同開発は、量産よりもエンタメ特化を志向しており、ビジネスとしての拡大余地はどうしても限られる。やはり、日産と三菱自の技術力を結集することで「電動化・知能化で世界をリードする」(三部ホンダ社長)という考えが強くなったということだろう。 ● 両社の経営統合の議論で ホンダはどこまで主導権を握れるか 統合の思惑はそれぞれにあるとして、問題は、ホンダ・日産経営統合の協議の中で、ホンダがどこまで主導権を握るのか、だ。3月にホンダ・日産提携検討が発表された際に、あのカルロス・ゴーンがレバノンから「これはホンダの日産に対する“偽装買収”に発展する」との言葉を発している。 かつてならば、両社の統合協議はトヨタとともに日本の自動車産業をリードしてきた日産が主導するのだろう。だが、いまの経営状況ではホンダが格上で、日産は“凋落”状況にある。ゴーンの予言(?)も的中する可能性は十分にある。 また、持ち株会社の統合比率の問題もあるが、それ以前に日産の筆頭株主はいまだにルノーだということも今後の焦点となる。 23年11月には、ルノー保有の日産株式43.4%をルノー・日産相互に15%ずつ持ち合う資本構成に変更することで合意された。とはいえ、22.73%の仏信託会社の保有分と16.19%のルノー保有分を合わせて、実質ルノーが保有する株式は合計約39%となり、依然日産の大株主にとどまっている。 ホンダがこの株式を引き受けて「ホンダが日産をのみ込む」とも限らない。日産の株価は、10年前の1279.5円(15年12月30日時点)から、12月17日には337.6円にまで大きく下落している。ホンダとの統合への報道が流れた18日には418円とストップ高まで急騰したが、それでも内田社長就任時の19年12月末時点の636円から見ても低い。これと比較すればホンハイに対抗する動きも現実味を帯びている。 それだけ日産の“凋落”は厳しいものだが、ホンダとの統合協議は、持ち株会社の下で日産ブランドを生かし続けるためにも、本当の日産リバイバルを早期に実現していくことを筆者としては期待したい。