精神科医が語る、素直に謝れる人ほど「自己否定」に走ってしまうリスク
素のままの自分を大切にする
他人からいろいろアドバイスのようなことを言われることってあると思います。 「小さいことをあんまり気にしないほうがいいよ」 「人の言うことは素直に聞かなきゃ」 「もっとまわりを見渡したほうがいいよ」 というように。 時にこういう言葉って、深い意味もない気軽なものだったり、「自分の望むとおりに動いて」とか「自分の言うことを聞け」という理不尽な意味で発せられたものだったりもします。でも、真面目でがんばりやさん、いい人や優しい人って、こういうときにもちゃんと「もっとこうしなきゃ」「こんなやり方もあったかも」って反省したり、改善しようとします。 「ちゃんと悪いところを修正しなきゃ」「至らない点は改めよう」「このままじゃダメだ」なんて、指摘された部分、誰かと比べて足りないと思ってしまっている部分を埋めようと、がんばりだしたりします。 自分の中に「反省」と「改善」がインストールされてしまっていて、「ああすればよかった」「次からはこうしなければ」と、自分を責めて反省したり、がんばって改善しだしたりします。 でもね、その「反省」や「改善」は自分にとって本当に意味のあること、本当に大事なことだったりするんでしょうか。誰かの何気ない一言や理不尽な言葉がきっかけで、あなたの特性や素晴らしさを押さえ込んだり捨ててしまうのは、ちょっともったいない。 「小さいことが気になる」のは「繊細で細やかなところに気づける」という長所になったりします。「素直に聞かない」のは、「物事を鵜呑みにせず、ちゃんと考えている」という良さになるかもしれません。「まわりを見渡せない」のは、「集中力がある」という意味にもなります。 つまり、「自分の良さ」「自分本来の特性」を無理して消してしまうことにつながったりもするんですよ。だから反省や改善は、あせってするのではなく、まずは自分の心も体もケアして、フラットな状況になってからでもいいんじゃないかなと思うんです。 誰かから気になる一言や胸に刺さる言葉を言われたときは、すぐに反省して改善しようとがんばろうとするのではなく、いったん立ち止まって、自分の心や体のケアをする。そして、心身ともにいい状態でその言葉を振り返ってみるのです。 たとえば、ノートにその言葉を書いてみて、「その言葉の意味はどういうことか」「反省するところ、改善するところは本当にあるのか」「その反省や改善によって『自分らしさ』に無理は出ないか」などを考えてみるのです。 誰かからふと言われた言葉で「変わらなきゃ」「このままじゃダメ」と反省や改善をしがちですけど、もちろんそれも悪くないんですけど、でもまずは、自分を心身ともにケアして落ち着いた状態で自分と向き合ってみることが大切だったりします。 そして、「自分本来の特性」「素のままの自分」も大切にしてあげてほしいなとも思います。そのうえで、自然と変わりたいと思ったときに、変わるのでもいいんじゃないでしょうか。
藤野智哉(精神科医)