精神科医が語る、素直に謝れる人ほど「自己否定」に走ってしまうリスク
日々の生活の中で、小さなミスや他人からの言葉に落ち込み、自分を責めてしまう経験はありませんか? 本稿では「ミスをした自分」や「ありのままの自分」を否定せず、大切にするためのヒントを、精神科医の藤野智哉さんによる書籍『「そのままの自分」を生きてみる』から紹介します。 【心が軽くなる言葉】人間関係が良くなる8か条 ※本稿は、藤野智哉著『「そのままの自分」を生きてみる 精神科医が教える心がラクになるコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
ミスした自分を否定しない
何も悪いことをしていないのに、申し訳なさそうに生きるクセがついてしまっている人がいます。 ・すぐ「ごめんなさい」と言ってしまう ・毎日残業になっても、「自分の仕事が遅いから」と思ってしまう ・忙しくてもLINEをすぐ返さなきゃと思う ・褒められても、「そんなことない」とすぐ否定する こんなふうに、つい謝ってしまったり、なんとなくペコペコしながら生きている人たちです。 もちろん、自分が悪いことをしたり、間違えてしまったときは「ごめんなさい」を言うのはいいことです。あるいは自分が悪くなくても、「ごめんなさい」と言うことで、相手がいったんおさまるなら言ってもいいと思います。武器としての「ごめんなさい」ですから。 相手が感情的になって話を聞いてくれないのなら、いったん「ごめんなさい」を放っておいて冷静になるのを待つ。麻酔銃みたいなものです。 「ごめんなさい」も武器として使えるなら、僕は全然いいと思ってます。感情を武器として見せるのは、交渉術のひとつですから。 でも、「ごめんなさい」のあとに、「私なんて」「私がダメだから」みたいな自己否定の言葉が出てきてしまうようなら少し注意が必要かもしれません。そんなときは、ちょっと立ち止まってほしいですね。 たとえば、仕事でミスをしたときに「私って仕事のできないダメな人間」と落ち込んでしまうようなケースです。 もちろん、「ミスした自分」を責める気持ちはわかります。ミスで迷惑をかけた相手に謝ることも大切なことです。でも、「仕事でミスしたこと」と「自分なんてダメだ」という自己否定を、すぐに結びつけるのはちょっと違います。 こういうときに大事なのは、「ミスをしたことで謝罪する(出来事)」と「ミスをしたことで自分を否定する(自己評価)」、この2つを分けることです。ミスしてすぐに「自分なんてダメだ」「こんなミスしたら評価が下がるよ」なんていう、ネガティブに評価する行動は封印しておくことが大切だったりします。 「すぐにLINEを返せないことは謝る」のはいいけど、「LINEを返せない自分はダメなんだ」と自分を否定するのをやめる。「褒められたことが意外で驚く」のはいいけど、「そんな褒められるほどの価値は自分にはない」なんて自分を否定するのはやめる。このような感じです。 とりあえずは、「自己否定の気持ちを感じたら、ちょっとその気持ちを横に置いておく」という意識をもつくらいでもいいかもしれません。