「なんで?」という質問は、実は “責め” の言葉。 感情コントロールができない彼女を救った、会話術とは【専門医が解説】
発達障害の女子高生を描いた映画『ノルマル17歳-わたしたちはADHD-』で脚本家デビューした神田凛さん。神田さんは高校生の頃、身近なところに発達障害の人がいたことをきっかけに関心を深めたそうです。当時、神田さんは、試行錯誤してその人と関わろうとしましたが、なかなかうまくいかないことも多々あり後悔の念に駆られたそうです。苦悩の末、神田さんが導き出した答えとは。 【データ】共働き世帯と専業主婦世帯、割合は? 女性が働きづらさを感じている原因は?
17歳で発達障害と診断
「私とAさんは17歳の時に出会いました。身近なところにいて無視できない存在でした。周りの人たちもAさんにどう接したらいいのか分からず、匙を投げる寸前まで行っていました。 たまたま知り合いが医師だったので、その人にポロッと話したら、『えっ!?それは発達障害じゃないかな。診断してあげないとかわいそうだよ。』と言われました。その後、Aさんやご両親に受診を勧めたら、心療内科を受診して発達障害と診断されたそうです。ご両親は発達障害だと分かって少し安心したようでした。本人も受診には抵抗がなく、そういうことなら行ってみようという感じでした。病名がついても発達障害が何なのか分かっていなかったので、あまり気にしていないようでした。でも、学校の図書室で発達障害の本を借りて、治らないと知ると泣いていたそうです。」 Aさんが明らかに他のクラスメートと違っていたのは、衝動を抑えきれないところでした。 「いわゆる“普通”と言われる人たちは一旦考えてから行動すると思うのですが、Aさんは『あ、あれしたい』『あれ、いいわ』と思ったら、すぐに行動に移さずにはいられない人でした。それを注意されたり制限されたりすると、うわ~っと暴れたり癇癪を起こしたりしました。そういうことが相次いで、みんなが『あれ?この子ちょっとおかしい』と思い始めたのです。」
理解してもらえない
Aさんは学校の先生ともめることも頻繁にあり、例えば、宿題を忘れてきた時に先生に、「なんで忘れたの?」と聞かれても、「忘れたものは忘れた」と押し問答になることがありました。 「先生は、『ちゃんとしなさい』、『普通は忘れない、連絡帳に書いてあるでしょう』と詰め寄りますが、Aさんにしてみたら、連絡帳に書いていても、それを確認しなかったらなかったことになってしまいます。先生と言い合いになって、『忘れたと言っているじゃないか! わー!』とヒートアップして、学校から逃げ出してしまうこともしばしばありました。」 Aさんは、他の人は意にも留めないような些細なことでも、できないことがたくさんあったそうです。 「先生に、教科書を開きなさい、ノートを取りなさいと指示されたら、最初の5分、10分はいいのですが、だんだん授業に集中できなくなるんです。最初は先生が読んでいるところを見ていても、筆記用具を見たり、教室を眺めたり、誰々ちゃんが何をしているとか見たりして、当初の集中すべきところから気が逸れてしまいます。 視界に入りやすいところから全ての情報が入ってきて、あれもこれも気になって授業に集中できなくなるんです。他にも、校則を守れないとか遅刻や居眠りをするとか、授業中スマホを触るとか些細なことを守れないことが多々ありました。」 だからと言って神田さんは、Aさんを見捨てようとは思いませんでした。Aさんが発達障害と診断された時に、発達障害のことを全く知らなかった神田さん。発達障害のことを知らないとちゃんと接することができない、一つでも二つでも傷つけられることを減らせたらと思い、まず本屋に足を運んだそうです。 「本屋に入り浸って一番分かりやすい本を買ってきて、周りの大人や家族と情報を共有しました。大人たちも動揺していました。世代的にも身体障害や知的障害という印象が強かったのだと思います。でも、知識だけを共有しても何もうまくいきませんでした。本には、『こういうふうに接しましょう』と書いてあったのですが、3歳~5歳の子どもを対象にした本が多く、あまり参考にならなりませんでした。」 Aさんが10代だったこともあり、大半の人は、発達障害ではなく思春期特有の未熟な行動だと決めてかかっていました。 「ちょうど思春期と被っていたこともあり、ただの思春期でしょうとか、反抗期だからこれくらい誰でもあるよとよく言われました。遅刻一つでも甘えに見えたり、だらしない性格だと思われたりしました。どこからどこまでが甘えで、どこからがADHDなのか、という切り分けは定型発達の人にはとても難しいことだったと思います。 学校の先生もすごく問題児扱いしていて、ご両親から聞いていてもAさんが発達障害だなんて思いもよらなかったようです。手のかかる子というお墨付きでした。スクールカウンセラーもいましたが、その人とはあまり相性が良くなく、学校で理解してくれる大人を見つけるのは困難でした。」 ただ、教師によっては親身になってくれる人もいて、「今は発達障害と診断される人がすごく多いですよね。どうやって対応していきましょうか。」と、ご両親に声をかけてくれる人もいました。ただ、「要はあれでしょ、昔からいた問題を起こすような生徒でしょう。」と言う教師もいたといいます。 「毎年、担任の先生が変わるたびにご両親はビクビクしていました。来年の担任の先生とは合うかなと。」