皇治vsヒロキング予定通り開催の”裏事情”とは?亀田興毅氏が“今後”についてJBCに念書提出「揉める気ない」もJBC幹部の大会後ペナルティ示唆発言に困惑
JBC管轄外のABEMAスペシャルファイトでボクシングのエキシビションマッチ(14日・エディオンアリーナ大阪)で対戦する皇治(33)と現役4回戦ボクサーヒロキング(本名・福重浩輝、29、KWORLD3)の計量及び前日会見が13日、大阪市内のホテルで行われ、JBCから「自主的変更」を求められていた異色マッチが予定通りに開催されることが明らかになった。JBCのライセンスを持つボクサーが現役の格闘家と対戦する非ボクシングはルールに抵触するため、JBCは6日付けで「自主的な変更の検討を求める」要望書を亀田側に通知していたが、一度“許可“されたイベントに直前になって突然“待った“をかけられた亀田側の対応は難しく、観客入れ替えなどの努力はするが、選手変更は行わない方針を固めた。亀田興毅氏は「今後は企画の前段階でJBCに相談する」との念書を提出。「JBCと揉める気はない」とし、今後は現役ボクサーを格闘家と対戦させない意向を示したが、JBCの成富毅事務局長は、ヒロキングが出場した場合、倫理委員会を開き、ペナルティを科す可能性を示唆した。
”迷走”JBCの実務責任者が今度は報道陣から“逃亡”
JBCがライセンスを発行している現役4回戦ボクサーのヒロキングが、RIZINなどで活躍する人気格闘家の皇治と63キロ契約の3ラウンドのボクシングルールのエキシビションマッチで戦う問題への対応で“迷走”を続けてきたJBCが今度はなんと“逃走”した。 JBCの実務責任者である成富事務局長は、この日、大阪市内のホテルで行われた「3150FIGHT」の前日計量及び、タイトル戦のルールミーテングを統括したが、報道各社が囲むと「今日は話しません」と言って、その場を足速に立ち去り、エレベーターに乗り込んだ。 追いすがる記者団が一緒に乗り込み質問を投げると、さすがに無視はせず答えを返したが、その後も一度として足を止めることなく堂島川沿いをスタスタと速足で進みどこかへ消えてしまった。何十年も前ににプロ野球の監督問題などで球団幹部に同じような態度を取られたことはあるが、組織のガバナンスや透明性が強く求められる時代において、このような対応をする例は見たことがない。 7月28日に開かれたJBCの緊急理事会では、非ボクシングへの関与を禁じるJBCルールの解釈の新基準と亀田側に「自主的な変更をお願いしたい」という要望書を提出することを強行決議したが、新基準の適用は今後であり、事実上、今回のイベントは容認した。 昨年12月には、但馬ミツロと元ボクサーで総合格闘家として活躍していた西島洋介がエキシビションマッチで対戦した同様のイベント開催を黙認。その後ペナルティなども科さず、今回も成富事務局長が、亀田側とメールなどで協議を重ね、実質“許可“を与えてしまったというJBCのルール運用と対応の不手際があり、今さらヒロキングの出場を強制的にストップできないとの判断で、JBCは、要望書を出すという条件付きでイベントを容認した。だが、この日、成富事務局長は「私は許可していません」と主張した。 亀田側の説明によると、JBCから届いた要望書は、強制力のない「あくまでも自主的な検討を求める」というもので、皇治の対戦相手をヒロキングから他選手に変更することと、ボクシングイベント後の観客の入れ替え、別チケットの用意などを求めてきたという。 この日は、要望書に対する亀田側の最終回答を確認すべきではあったが、成富事務局長は、「いろいろとお願いをしている。どういう状況になるか、明日にならないとわからない。返答というよりも、明日どういうことが行われるかを確認しました」という。 昨年12月の大会では、但馬と西島のエキシビションが始まるとJBC役員は、ゴングなどを残して全員撤退したが、今回は残ってチェックし、ヒロキングが出場した場合、「ペナルティの対象? そういう形になります。倫理委員会を経て」と、成富事務局長は、ヒロキングとプロモーターの亀田氏らの処分の検討を倫理委員会に諮ることを示唆した。 事実上、今回のイベントを容認しておきながら、終わった後に処分の検討というのも理解に苦しむ方針だ。 一方の亀田氏は、“逃亡“したJBCの成富事務局長とは対照的に公式会見後に囲み会見の場を椅子を並べて設定して報道陣に真摯に対応した。 「要望書は来ましたが、時間的に検討できるところとできないところがある。昨年12月にやった前例があり、今回は人もお金もつっこんであれだけの会見もやった。ABEMAやスポンサーの問題もあり、選手からも、なんでダメなんですか?という声もある。今後はルールが整備されていくのでしょうが、今回、いきなり辞めるわけにはいかない。ただ観客の入れ替えなど出来る限りのことはしたい」 あまりにも急なJBCからの要望に時間的な問題から皇治の対戦相手をヒロキングから他選手へ変更することはできなかったが、JBC管轄のボクシングの試合が終了後、場内アナウンスなどで観客に退場を求めて入れ替えを喚起。1時間の間隔をあけてチケットも別に用意して番組内でもJBC管轄外のイベントであることを示すテロップを流すなど、JBC管轄外であることを明確にする努力をするという。 また「今後は企画を立てる前の段階でJBCに相談する」との念書をJBCに提出したことも明かした。 「今後もJBCに決めたルールに沿う」とし、JBCが発表した新解釈基準に応じて、今後は現役ボクサーを他の格闘家と戦わせるような非ボクシングイベントは行わない考えであることを付け加えた。どんな結果に終わろうが、皇治vs現役ボクサーの異色マッチは、これで見納めかもしれない。 亀田側は、今回のイベントに関しては、事前に成富事務局長と詳細なやりとりをしており、許可を得たと認識していた。成富事務局長が、それに反する発言をしていることに関しては「立場上そう言わないといけないというのがあるんじゃないですか。でもルール違反しているわけじゃない。これがルール違反なら過去もすべてルール違反」と大人の対応。「JBCと揉める気も喧嘩する気もない。JBCは尊い存在。だからルールをもっともっと厳格にして、中途半端な抜け道があるのはダメ」と続けた。 ただJBCがイベント終了後にヒロキングとプロモーターである亀田氏らにペナルティを科す可能性があることを示唆したことについては、困惑の表情を浮かべた。 「(イベントを強行すれば処分するとの)通達はない。それはやらないほうがJBCにとっていいのでは。(もし処分が科せられれば)しっかりと何をもってペナルティになるのか話していきたい」 会見に同席した亀田サイドの幹部も処分が科された場合には、受け入れず、反論を主張する考えを示した。 亀田氏には「選手の声がすべて。もっとボクシングの地位を上げていかないと。今後のボクシング界を変える立場で、できる限りのことをしたい。ファイトマネーも底上げし、命をかけてやっていることをボクシング関係者にもわかってほしい」との思いがある。 今回の問題をひとつの教訓に、今後ボクシング界が格闘界とどうかかわっていくかについての真剣な議論は必要になるだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)