小型ロケット「イプシロンS」2段燃焼試験でまた爆発 JAXA種子島
2段燃焼試験は再発防止策を講じた後、いずれかの施設の復旧を待って再度行う見込み。復旧に能代の試験棟は数年、種子島の施設は少なくとも数カ月かかる。能代には大気中で燃焼させる試験棟もあるものの、安全対策の強化が必要という。今回の爆発を受け、追加の試験を行う可能性もある。
イプシロンは3段式の固体燃料ロケット。大型の液体燃料ロケット「H2A」や後継機「H3」と共に政府が「基幹ロケット」と位置づける。科学や観測、技術実証目的の小型衛星を搭載。1段をH2Aの固体ロケットブースターと共通化し、機体点検や管制を合理化するなどしてコストを抑えた。従来型を2013~22年に6機、内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)で打ち上げ、1~5号機が成功した。 改良型であるイプシロンSは全長27.2メートル。打ち上げ能力は、重さ600キロの衛星を地球観測などに使われる太陽同期軌道に載せる場合に最高高度700キロとなり、イプシロンの同500キロから向上。1段は、H3の固体ロケットブースターと共通化する。
その他の主な改良点としては(1)機体上端のフェアリング(衛星カバー)を従来の2段燃焼開始前ではなく、燃焼中に分離し、軌道の自由度を高める、(2)フェアリングが3段機体を覆わない構造とし、衛星を搭載して10日以内に打ち上げられるようにする、(3)3段機体の姿勢制御の方式を変更し、衛星にかかる負荷を軽減する――という。
2段機体は従来型の全長4メートルから4.3メートルに大型化し、搭載燃料は15トンから18トンに増量。推力を470キロニュートンから610キロニュートンに高める。打ち上げで1段を分離後、2分程度にわたり燃焼する。 イプシロンSはJAXAとIHIエアロスペース(東京都)の共同開発で、2機目から同社に打ち上げ業務を移管する。従来型で50億円前後だった打ち上げコストの目標は非公表だが、将来は消費税と安全監理費用を除き30億円以下を目指すとみられる。なお、呼称はイプシロンS初号機などとせず、従来型の号数を継承して「イプシロン7号機」などとすることを、JAXAが25日明らかにした。
従来型の最終6号機は2022年10月、姿勢制御装置の燃料タンクの部品がちぎれて配管が詰まり、打ち上げに失敗している。昨年3月にはH3の初号機も失敗。H3はその後、3機連続で成功していたが、今回の爆発により、国産ロケット技術の信頼性に影を落とす事態が再発した形となった。