オアシス、世界を制したギャラガー兄弟が大いに語る「あの頃の俺らはマジで最高だった」
オアシスじゃない人生なんて誰が欲しがるんだ?
ノエルは言うべきことが尽きたようだ。ステージ上の彼はシャンパンのボトルを武器のように振り回し、バンドのメンバーや興奮している観客に黄金の液体を浴びせかけている。オアシスはブリット・アワードのグランドフィナーレである最優秀グループ賞を授賞し、またひとつトロフィーを手にした。 審査員たちの傾向について軽く触れておくと、グリーン・デイ、フー・ファイターズ、ガービッジ、TLCがノミネートされていた最優秀インターナショナル・グループ賞を受賞したのはボン・ジョヴィだった。それでも、会場にいる誰一人としてオアシスの英国での圧倒的勢いを否定することはできない。わずか2日前、ノエルはこの結果を予想した上で、今まさにアルコールを浴びせている他のバンドへの苛立ちをぶちまけていた。 「俺は最高のバンドにいて、最高のアルバムを作った」とノエルは言った。「だからさ、俺に言わせれば、みんなまとめて消えちまえばいいんだよ。他のバンドなんて、今の俺のギターの弦すら張れやしない。負け犬どもさ」。 ノエルは高らかに笑った後、しばらくの間沈黙した。「本気で言ってるんだよ。俺らの成功を受けて、他のイギリスのバンドもアメリカで結果を出せるなんて、世間のやつらは本当に思ってるのか? 絶対に無理だね」。 それは事実だ。いくつかのバンド(エラスティカやレディオヘッドなど)はアメリカで控えめな成功を掴み始めているものの、それが新たなブリティッシュ・インヴェイジョンという大袈裟な触れ込みに見合っているとは言い難い。これらのグループは自国で、オアシスを現在の地位から引きずり下ろすことは到底できていない。今夜、オアシスはブリット・アワードの賞をほぼ総なめし、最大のライバルであるブラー(彼らの主な罪はイギリスの中産階級について歌っていることだろう)を完全に蹴落とし、アワードでの演奏を一度は承諾しておきながら掌を返して拒否することで、自国のメディアの関心と怒りを煽った。 ノエルによれば、今後の2カ月はオアシスにとって極めて重要な時期だという。というのも、双子座であるノエルは1年のほとんどを通じて眠っている自身の作曲能力が春になると開花すると信じているからだ(※編注:ノエルは2023年のインタビューでも「ほとんどすべての曲を春に作ってきたんだ」と語っている)。過去数年間、彼はバンドの曲の大半を3月から5月末までの間に書き上げており、他のメンバーにそれらを聞かせるのはスタジオで集まる時だった。 「悲しいけど、それが現実なんだ」とノエルは言う。「それについては何も隠し立てできない。俺が仕切ってるんだ。あいつら4人はどうせやる気もないしな」。 オアシスの基本的な姿勢はこうだ。「ビートルズっぽい音なら録音しろ。迷ったらノエルに任せろ。できるだけ自分に注目させろ」。多くのアメリカのバンドが成功を望みながらも世間からの注目を嫌がるのに対し、オアシスはロックスターがグルーピーのお腹の上でコカインを吸い、その後ホテルの窓からテレビを投げ捨てたような時代を生きようとしている。彼らが欲しているのは匿名性ではなく、絶え間ない称賛と喝采だ。 「イタリアでは2000人くらいのファンにもみくちゃにされたよ。もうプライバシーとはおさらばだな」。ノエルは満面の笑みを浮かべながらそう話す。「でも、それも今後5~6年の話さ。それ以降は誰からも相手にされなくなって、家で好きなだけのんびりできる。今は俺たちの番だ。今俺らは台風の目にいるけど、それもいつかは過ぎ去る。30代後半には特に悩みもなく、当時をこんなふうに振り返るんだろうな。『あの頃の俺らはイカしてた。いや、マジで最高だった。そしてこれが俺たちが築いたものだ』って。今は小さな代償を払う時なんだよ」。 しかし、オアシスという肩書きが常に付きまとう今の生活を窮屈に思うことはないのだろうか? ノエルは他のメンバーなしでも、同じくらいの成功を収められると主張する。「いいものはいいんだよ」。そう話しながらも、彼は最近ソロとして映画『クロウ II』の音楽を手掛けるという、約80万ドルのオファーを却下している。その理由について彼は、自分が書くのはあくまでオアシスの曲だと話す。 「オアシスじゃない人生なんて誰が欲しがるんだ?」とノエルは言う。「音楽がなければ、生きている意味なんてない。自殺するってわけじゃないけど、もし交通事故で手を失ったとしても、俺は音楽をやってなきゃダメなんだ。音楽が俺の人生のすべてなんだよ。アートなんてクソくらえだ。絵なんて描いて何が楽しいんだよ。俺は読書もしない。たまにバンドについての本は読むけど、フィクションの本は読んでいられないんだ。他人の話なんて退屈でしかない」。 作曲が退屈だと感じる人もいるとか、ここ数年だけでもビートルズよりも大きい存在だと自称しながら消えていったイギリスのバンドが掃いて捨てるほどいるとか、そんな主張でノエルが言い放ったことに反論するのは無意味だ。おそらく彼は、話すことがなくてただ嫌味を言っているに過ぎない。しかし、それでいいのだ。弟に聞いてみればわかる。 リアム、あなたはデタラメばかり口にしてうんざりしないのですか? 「いいや」とリアムは即答し、悪びれる様子もなくこう続けた。「俺は自分のことを話すのが大好きなんだよ」。 --- 映画『オアシス:ライヴ・アット・ネブワース 1996.8.10』 監督:ディック・カラザース 出演:オアシス 上映時間: 約110分 制作年:2021年/制作国:イギリス 2024年10月18日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか、全国ロードショー © Big Brother Recordings Ltd © Jill Furmanovsky 『Definitely Maybe(邦題:オアシス)』30周年記念デラックス・エディション 発売中 【展示会情報】 リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展 会期:2024年11月1日(金)~11月23日(土) 会場:六本木ミュージアム
CHRIS MUNDY