オアシス、世界を制したギャラガー兄弟が大いに語る「あの頃の俺らはマジで最高だった」
歌詞に意味なんていらない
ノエルがバンドに居座り、エリザベス女王が在位するなか、オアシスは2年にわたって練習を重ねた後、満を持してスコットランドのグラスゴーにあるクラブのステージに立つ。結果として、バンドはわずか6回のライブでレコード契約を勝ち取る。その後、『Definitely Maybe』はイギリスで史上最速の売上ペースを記録したデビューアルバムとなり、ドラマーのマッキャロルは解雇され、マッギーガンとノエルはロンドンに移住し、『Morning Glory』はアメリカでトップ5入りを果たした。もはやマンチェスターは、オアシスにとって過去となりつつある。 「俺はまだマンチェスターに住んでるけど、もうそこに自分の居場所はない」。今では結婚し、1歳の娘がいるボーンヘッドはそう話す。「バンドを始めた頃は、誰かから『パブに来いよ、ビール飲もうぜ』って誘われても、『悪い、リハーサルがあるんだ』って断ってた。幼馴染の2人が結婚することになって、結婚式に来てくれって言われた時も、『すまないが仕事なんだよ、リハーサルがあるんだ。悪く思わないでくれ』って答えた。それくらい真剣だったんだ。結果として、この街には友達と呼べるやつはもういない。みんな『くたばれ』って吐き捨てて離れていったんだ。でも今、俺たちはいい暮らしをしながら、『勝手にしろよ、クソが』って感じでそいつらを見下してるんだよ。昔からずっと支えてくれてるのは、たぶん1人だけだ」。 マイケル・ハッチェンスが武器を隠し持っていると疑う根拠はないが、もしそうだとすれば、オアシスのメンバーは重大な危険にさらされていることになる。 「マイケルは俺の顔を引っ叩きたいはずだ」。リアムは身の危険を理解しつつ、ハッチェンスから授与される賞を受け取るために、ふらつきながら壇上に向かう。INXSのフロントマンは静かに傍に寄り、ノエルが弟よりも先に前に出る。一瞬、良識と理性が勝ったかのように思われたが、そうではなかった。 「落ちぶれたやつに賞のプレゼンターをさせるべきじゃない」とノエルは言い放った。少しの間を置いて、彼は受賞スピーチをこう続けた。「俺は金持ちで、お前はそうじゃない」。 これもブリット・アワードでの一幕だ。「Wonderwall」が最優秀ビデオ/ソング賞に選出され、オアシスは獲得したトロフィーの数をさらに増やした。 多くの点で、「Wonderwall」はオアシスというバンドを象徴している。タイムレスなメロディが美しいこの曲は、実際にはそうでなくとも、ごく自然に生まれてきたかのような印象を与える。しかし、歌詞の意味を理解することはほぼ不可能だ。 「ワンダーウォールは何にでもなり得るんだよ」とリアムが言う。「ただの美しい言葉さ。バスのチケットを探してるときなんかにさ、チクショウとか何とか言いながらポケットやら何やらを全部ひっくり返して、ようやく見つけて『すげぇ、やっぱ俺ってワンダーウォール』みたいな感じさ」。 リアム、わかりやすい解説をありがとう。だが実際には、「Wonderwall」はノエルが当時無職だったガールフレンドのメグ・マシューズのために書いた曲で、彼女を大切に思う気持ちが込められている。「Wonderwall」という言葉(ジョージ・ハリスンのソロアルバムのタイトルでもある)を選んだ理由については、ノエル自身もよくわかっていないようだ。おそらく彼の音楽的なインスピレーションはビートルズから来ていて(多分歓迎すべき)、歌詞のお手本は(絵本作家の)ドクター・スースなのかもしれない(考え直すべきだろう)。歌詞の一部を例に挙げよう。「シンクは魚でいっぱい/彼女の頭の中は汚れた皿でいっぱい/俺の犬はかゆがってる/またキッチンでかゆがってる」。 「わかってるよ、俺は怠け者さ」とノエルが言う。「俺はジョン・レノンじゃない。何かを伝えようとしてるわけじゃなくて、ただみんなを楽しませたいだけさ。歌詞に意味なんていらねぇだろって思う時もあるよ。たかが歌詞だろ。全部インストのアルバムを作るべきかもな」。彼はそう言って、短い沈黙を挟む。「シラフの時は、歌詞について考えすぎてしまうんだ。俺は酔っ払ってる時が一番が調子いいんだよ。何も考えずに、ただ手を動かす。例えば『Roll With It』とかさ……」。彼は言葉を区切り、おどけるように首を振りながらこう吐き捨てた。 「誰が気にするんだよ。『Don’t Look Back in Anger』みたいな素晴らしい曲でさえ、まるで何の意味もないんだ」。 彼の言うとおり、「Don’t Look Back in Anger」は素晴らしい曲だ。だがそれはまるで、魅力的なブラインドデートの相手が、実は極端な会話下手だったようなものだ。リアムに聞いてみればわかる。 「曲には意味がたくさん詰まってるんだよ」とリアムは話す。曲に何の意味があるのか知らないとさっき言ったばかりなのだが。「俺にはわからないけど、意味は確かにあるんだ。何かを意味してるけど、それが何なのか俺にはわからないだけさ」。 『Definitely Maybe』の楽曲は、曲そのものよりもアティテュードが魅力だった。「Cigarettes and Alcohol」「Rock ‘n’ Roll Star」「Supersonic」は、まさにロックソングについてのロックソングであり、『Morning Glory』の「Cast No Shadow」「Don’t Look Back in Anger」「Champagne Supernova」も、歌詞の内容ではなくその優雅さに主眼が置かれている。新作が盗作で訴えられなかったことを、彼らは誇りに思うべきだろう。それは進むべき道の第一歩だ。デビューアルバムの「Cigarettes and Alcohol」はT-Rexの「Bang a Gong」の冒頭のリフを完全にパクっていると批判され、「Shakermaker」はコカ・コーラのジングル「I’d Like to Teach the World to Sing」のメロディ(と歌詞の一部)を盗用したとして訴訟を起こされた。最終的に裁判所は、バンドに一部の歌詞を変更するように命じた。 「パクったのは事実だから、やつらには俺らを訴える権利があった」とボーンヘッドは言う。「みんなやってることさ。他のバンドの曲をパクって歌詞だけ変えるんだよ。俺たちも同じことをやったけど、歌詞の一部もそのまま拝借したんだ」。彼は少し間を置いてこう言った。「今はペプシに乗り換えたよ」。 CM曲の盗作疑惑をかけられたことで、ノエルは自分が侮辱されたと感じなかったのだろうか? お世辞にも、広告業界のお偉方たちは斬新さで知られているとは言い難い。もしかすると、キャッチーでも度が過ぎるということがあるのかもしれない。しかし、彼はこう反論する。 「ニルヴァーナがいい例さ」とノエルは言う。「彼らはマジで最高だったし、あの男(カート・コバーン)はキャッチーなロックの王様だった。彼よりキャッチーな曲を書けるやつなんていない。だからキャッチーすぎるなんてことはないんだよ。マーシャルのアンプの音量を最大にして、客の目に涙を浮かべさせたら勝ちさ」。