IT系や金融系のシン富裕層がわが子を入れたがる千葉と奈良の急伸私立とは…昔からの富裕層と全然違うワケ
■シン富裕層が支持する筆頭は「渋幕」と西大和 すべての富裕層が、親から受け継いだ財産によってお金持ちになった「地元の名士」タイプなわけではない。高学歴を獲得してIT系や金融系など報酬の高い仕事に就いた、あるいは自らのビジネスでお金持ちになったような「シン富裕層」もいる。彼らはわが子の教育についても、伝統的な名士層とは違う感覚を持っているという。 「彼らは仕事や生活において『合理性』『成果を上げること』を重視しており、学校にも同じことを求めます。なので、昔から地元で評価されてきた名門校より、短期間で急速に難関大合格実績を向上させたような新進の急成長私立校に魅力を感じるようです」(同) シン富裕層の人気を集め、名門校のカテゴリーに入りつつある学校はどこか。関東の筆頭が、「渋幕」こと、渋谷教育学園幕張(千葉県)だ。開校は1983年。公立高校王国だった千葉で2010年代に全国区レベルの進学校に躍進するとともに、自ら調べ自ら考える「自調自考」を促す教育など、新しいタイプの進学校のあり方を実践して注目を浴びている。 「13年連続で東大合格者トップ10にランキング入りするなど、難関大学への進学実績は抜群。一方で東京藝大など他の進学校にはあまり見られない進学先も多く、海外大学への合格者も60人を超えました。開成や桜蔭(いずれも東京都)に合格しながら、共学であることを理由に『渋幕』を選ぶ子も珍しくありません。グループの渋谷教育学園渋谷(東京都)も、1996年に女子校から共学化して以来同様の道をたどっています。2016年に始まった東大の推薦入試では毎年合格者を輩出しており、累計合格者数では最多です」(同) 関西では、24年の東大合格者ランキングで5位になり、優秀な子が第一志望にする進学校になった西大和学園(奈良県)が、シン富裕層の間で支持を得ている。 西大和学園の開校は1986年(中学は88年)。当初は中堅公立高校のすべり止め、進学目標は関西大学20人という平凡な私立高校だったが、90年代に京大合格者が増えていき、2010年にはランキング1位に。以降、優秀な生徒が東大を目指すようになって、東大合格者ランキングでも頭角を現して知名度が全国区へ広がっていった。とりわけ女子の成績上位層の間で人気上昇が著しく、中学受験においては女子の偏差値が男子の偏差値を上回っている。最近では高校生ビジネスプラン・グランプリや物理チャレンジ、クイズ選手権といった、課外活動での活躍も目につく。 さらに、1924年創立の伝統女子校ながら、近年、シン富裕層の父母の関心を集めているのが洗足学園(神奈川県)だ。系列に音楽大学があるというイメージが強いが、近年、教育内容やシステムの改革に着手。それが奏功して、2021年からは東大合格者が2桁台に突入した。「模擬国連大会への参加など、グローバル教育に力を入れているのが特徴。中学受験塾にも注目されています」(同) 関西を例にとれば、灘や東大寺学園(奈良県)、戦後まもなく開校した洛星(京都府)といった名門校は、地元の名士からも高く評価され、「わが子を入れたい学校」の上位を占め続けてきた。ところがその後、1962年に校名変更でリニューアルされた洛南(京都府)が、80年代に入ってから難関大学への合格実績を急速に向上。東大や京大の合格者数で、既存の名門校を凌駕するようになった。奈良でも西大和学園が、東大・京大の合計合格者数でこのところ東大寺学園を上回っている。