【NBAプレーオフ】マイク・コンリー、ナゲッツとの『GAME7』でのトラウマを乗り越える「4年間だ。この48時間じゃない」
「今がキャリアで一番楽しめているかもしれない」
マイク・コンリーは昨年2月にティンバーウルブズにやって来た時、キャリアの先行きに弱気にならざるを得なかった。レイカーズがディアンジェロ・ラッセルをウルブズから引き抜く際に、再建中のジャズがそれに便乗する形で3チーム間トレードとなり、コンリーはウルブズにやって来た。 この時、コンリーは契約を1年半残しており、最終年となる2023-24シーズンは年俸2400万ドル(約36億円)だったが、クラブ側が2023年のオフにその一部を払えば解除できるオプションがあった。コンリーはトレードが決まった時点で、ウルブズが自分をどれだけ評価しているか確信が持てなかったし、最後は仲間割れでチームが空中分解し、プレーオフに進んだもののファーストラウンドでナゲッツに粉砕された昨シーズンを終えた時点で、契約解除を覚悟した。 しかし、それは過小評価だった。ウルブズは最終年の契約を保証しただけでなく、今年2月には新たな2年契約をオファーした。2年2100万ドル(約32億円)は金額こそ下がるものの、36歳になったコンリーにとっては願ってもないものだ。 そして今、あのトレードが大成功だったことは確実になった。個性豊かなタレントを束ねる上でコンリーは欠かせない司令塔であり、ニキール・アレクサンダー・ウォーカーも素晴らしいユーティリティプレーヤーとして存在感を発揮している。同じポイントガードとしてラッセルとコンリーを比較した場合、ラッセルのほうが確実に良いスタッツを残すだろうが、今のウルブズに必要なのはコンリーのリーダーシップだ。 昨シーズンの彼は『新人』として振る舞ったが、シーズン終盤とプレーオフの失敗を経て、昨年夏のトレーニングキャンプからリーダーシップを発揮し始めた。「みんな優勝したい、リングが欲しいと口では言うが、そのための行動はなかった。それは能力やモチベーションがないからじゃなく、やり方が分からないからだ。それは無理だと悟りながら言う『優勝したい』に意味はない。本気で優勝したいなら、そのための行動を取らなきゃいけない」と彼は語る。 アンソニー・エドワーズは試合後にアイスバスに入らなかった。人は誰しも氷水に浸かりたくはないものだが、コンリーはそれが身体にどんな効果をもたらすのかを説き、一緒に入ろうと誘った。1週間目でエドワーズはつま先を氷水に入れ、その何日か後に入れるようになった。今ではコンリーより先に入る。そういった小さな出来事が、少しずつウルブズを変えていった。 コンリーのリーダーシップは今も発揮されている。サンズをスウィープしてファーストラウンド突破を決めた時、彼はチームミーティングでこう語った。「プレーオフ進出や、プレーオフの1勝で満足してしまうのか。優勝したいなら、それがどういう意味なのか今こそ考えるべきだ。ファンは大喜びしてもいいけど、僕らはそうじゃない」 そしてコンリー自身にも、乗り越えなければならない課題があった。ナゲッツとの『GAME7』だ。バブルの2019-20シーズン、ドノバン・ミッチェルとジャマール・マレーの点の取り合いとなったファーストラウンドは『GAME7』にもつれた。2点を追うジャズは最後の攻めをミッチェルに託すが、残り10秒でターンオーバーを喫してしまう。ナゲッツの攻めをコンリーが防いで、残り4秒でもう一度チャンスがやって来た。コンリーは3ポイントラインの手前までボールを運んだが、決まれば逆転のシュートはリムに嫌われた。1勝3敗から逆転したナゲッツは、このシーズンから王者への歩みを進め始めることとなった。 タイムアウトも残り時間もないあの状況でのシュートを外したことは責められないが、コンリーは自分を責め続けていた。『GAME7』を控えてコンリーは、「忘れることができない」とそのシーンを振り返る。「積極的に思い出そうとは思わないけど、練習中に自分を奮い立たせなきゃいけない時には、あのシーンを思い出す。同じ状況になった時に失敗したくないだろう、同じ状況はまた来るぞ、とね」 そして彼はナゲッツとの『GAME7』をずっとイメージしてきた。「基本的にナゲッツは同じメンバー、同じチームだ。ずっとこの対戦を考えてきた。4年間だ。この48時間じゃない。上手くいけば、前回とは違った結果になる」 そして今回の『GAME7』の勝者はコンリーだった。39分の出場で10得点8リバウンド4アシスト2スティール、ターンオーバーはゼロ。ゲームウィナーを放つ機会はなかったが、彼の中でリベンジは果たせた。 「ああ、うれしいよ。今がキャリアで一番楽しめているかもしれない」とコンリーは晴れやかな笑顔を見せる。「今日の僕の目標は『楽しもう』だった。こんな瞬間がいつまた訪れるか分からない。だから今の僕は子供のように、チームメートと一緒にこの時を楽しんでいる。それだけ特別な勝利だった。ここのチームメートたちは自分に負けない。あのナゲッツを相手に勝ったんだ、とても誇りに思うよ」