日本の国民的家庭料理の代表、肉じゃが。実はヨーロッパでも愛されていた!
生活史研究家としてたくさんの著書がある阿古真理さんが、今回テーマにしたのは、肉じゃが。『日本の肉じゃが 世界の肉じゃが』(新星出版社)というインパクトのあるタイトルの新刊が出ました。 【写真】アイルランド、スウェーデン、ハンガリー。各国の肉じゃがをどうぞ! まえがきでこのように書いています。 _________ あなたは肉じゃがが好きですか? 肉じゃがと言えば、日本育ちの日本人で知らない人がほぼいないほど、ごく一般的な家庭料理です。伝統的な和食のように言われることもありますし、好きな人の胃袋をつかむために覚えるべき料理、と女性が言われた時代もあります。お母さんがつくってくれた思い出の味、という人もいます。 それなのに、マニアが多いカレーやラーメン、パンなどの陰に隠れて、あまり語られてこなかったのはなぜでしょうか。空気のように身近過ぎて、あるいは家族のように当たり前過ぎて、うっかり忘れていたのかもしれません。 今こそ、そんな地味だけど大切な肉じゃがについて、本を通して語り合いましょう! __________ 日本の肉じゃがについては、時代背景とレシピを考案した料理家・料理人について詳細に記し、それぞれのレシピを写真入りで紹介しています。各レシピの出典も明記。 それによると、本邦初の肉じゃがレシピは、1964年『きょうの料理』(NHK出版)5・6月号に載った、尚道子さんの肉じゃが。尚さんは、『きょうの料理』の創成期を支えた料理家さんです。 その最初のレシピは、「強火で煮る」時短料理だったそうです。 本書には、1964年から2024年まで23人の料理家のレシピが載っていますが、そちらは本で読んでいただくとして、こちらでは「世界の肉じゃが」から3回にわけて、その背景とレシピの一部を抜粋記事でお届けします。 第1回の今回はヨーロッパの肉じゃがについてです。 世界の味をどうぞ試してみてください。
世界中にある肉じゃが
肉じゃがのような料理は日本に限らず世界中にあり、外国料理のレシピ本で「○○(国名)の肉じゃがと呼ばれています」などと紹介されていたりします。現地で「おふくろの味」と親しまれていることが書かれたレシピもあり、幸せな家族の象徴が、肉とじゃがいもを使った料理である点も共通しているのかもしれないですね。 肉といもを一緒に食べる国や地域はたくさんありますが、調理法、食べ方はさまざま です。考えてみれば文化圏が違えば、調理法や食材の選び方が変わるのは当然のこと。 そこで本書における肉じゃがの定義を、以下のように決めました。 【1】肉とじゃがいもを使用する。 【2】モツやソーセージなどの加工肉はOK。 【3】肉が入っていれば、魚介類や豆などのタンパク源が入ってもOK。 【4】じゃがいもが入っていれば、さつまいもなどほかのいも類や穀物が入ってもOK。 【5】調理方法に必ず「煮る」が入ること。 【6】食事のおかずになること。ご飯やパン、団子を添えるのはありですが、ご飯ものやパンを混ぜ込む料理はNGです。 紙面に限りがあるので、涙を呑んでリストから外した料理もありますが、できるだけ 世界の各地域を象徴する多様な料理を選んだつもりです。力が及ばず、見つけられなかった料理もあると思います。それはまた別の機会に。 今回料理制作とレシピを担当した料理家の藤沢さんは、19歳の頃から40年あまり、世 数十カ国を巡り、ときには厨房に入り込んで料理を教わってきたつわもの。気に入っ 店のそばに部屋を借り、毎日通ってレシピを教わった料理もあるそうです。彼女が体 験し、調べ、現地の人たちと交流して得た知識も今回採り入れています。 結果的に、確かに肉じゃがと呼べる料理がずらりと並びました。シンプルに肉とじゃ がいもだけの料理もあれば、具だくさんの料理もあります。塩味はもちろん。トマト味、カレー系、クリーム系、パクチーを効かせたものなど味つけも多彩。その国や地域ではなぜ、そんな料理になるのか。その土地がたどってできた道とともに、ご紹介していきます。 まずはヨーロッパから。