日本の国民的家庭料理の代表、肉じゃが。実はヨーロッパでも愛されていた!
肉じゃが好きな国はどこ?
ひと口にヨーロッパと言っても、政治体制はもちろん、成り立ちや文化も国によって異なります。見つかった肉じゃがも多彩ですが、バリエーションがあまりにも多いため、とても全部は紹介しきれません。絞り込む際、私たちが知るヨーロッパのイメージが、もう少し広がるような料理を選びました。 19世紀半ばのじゃがいも飢饉で大量の人々が移民として出ていったアイルランドには、じゃがいもを肉と煮込んだ郷土料理の「アイリッシュ・シチュー」があります。この料理は、移民たちが定住した国々でも食べられていますし、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか? 互いに共通する肉じゃが文化を持つのが、北欧諸国です。 その中から今回選んだのは、船乗りの料理がもとになったという「フェーマンスビッフ」で、スウェーデンの肉じゃがです。北欧については日本の平安時代と同じ頃、ヨーロッパ各地で交易と略奪を行っていたヴァイキングの拠点だったことを彷彿とさせます。 その他、 デンマークには「ラブスコウス」という牛肉とじゃがいも、たまねぎを煮込む料理が、 ノルウェーにもほかの根菜類も加える同様の料理があります。 東欧諸国やロシアにも肉じゃががあります。 ハンガリーの「グヤーシュ」、ウクライナ発祥でロシアその他でも食べられている「ボルシチ」がすぐに思い浮かびます。 グヤーシュはパプリカ粉を使ったスープで、とうがらしを品種改良してパプリカを生み出し、その野菜からビタミンCを発見した国ならではの料理と言えます。 しかし、『トウガラシの世界史 辛くて熱い「食卓革命」』(山本紀夫、中公新書)は、 グヤーシュを「パプリカとタマネギを入れたラードを使い、小さく切って加熱した牛肉とジャガイモでつくられる料理」と定義しています。具材の主役は牛肉とじゃがいもなので、その国らしさが感じられる1品として選びました。 一方、さまざまなバリエーションがあるボルシチはビーツが主役。「世界の食文化 9 ロシア」(沼野充義・沼野恭子、 農文協)は、「どの肉を使おうと、どんな野菜を使おうと、またどのような組み合わせにしようとかまわないが、ボルシチにこれだけは絶対なくてはならないという重要な食材がビーツ」とはっきり書いています。 じゃがいもはなくても成立することから、ボルシチは外しました。