ガンバからジュビロ移籍の遠藤保仁はJ1復帰へ巻き返しの切り札になれるのか?
最初のスパートでは開幕前のキャンプから用意してきた4バックと3バックのうち、後者に切り替えて守備を安定させたことが奏功した。終盤戦のスパートは夏場の移籍期間中に加入し、18試合で7ゴールをあげたブラジル人のFWウェリントンの補強に導かれた形になった。 今シーズンのジュビロはフベロ前監督のもとで4バックと3バックが併用されてきたが、鈴木監督は3バックを採用。さらに前監督のもとで出場機会を得られなかった、日本代表としても豊富な経験をもつ37歳のベテラン今野泰幸を、ボランチではなく3バックの中央で起用した。 守備面の判断力が高く、経験に裏打ちされたカバーリングのポジショニングもさえた今野の存在もあって、サンガ戦は前半を1-0で折り返している。後半に入って得点王争いのトップを独走するFWピーター・ウタカの個人技の前に連続失点を喫したが、今野の起用を介して守備面では光明が見えた。 攻撃面はどうか。総得点33はトップの水戸ホーリーホック、徳島ヴォルティスに5差の6位タイと決して劣ってはいない。サンガ戦で先制点をあげた東京五輪世代のエースストライカー候補の小川航基、チーム最多の9得点をマークしている2年目のルキアン、下部組織出身の中野誠也のフォワード陣、そしてトップ下の山田大記とタレントも擁している。 遠藤が自信を込めて言う。 「福岡がいい例のように、連勝すれば一気に上位へ行く可能性もある。難しい試合もあるかもしれないけど、より多くの試合で勝ち点3を取っていけば。今日初めて合流したばかりですけど、そういう強い気持ちをもってこれから取り組んでいきたいと思っています」
開幕前の時点で、J1昇格のために必要な勝ち点としてジュビロは80ポイントを定めている。現状が30ポイントで残りが18試合だから、17勝が必要な計算になる。目の前には高く険しいハードルがそびえ立つが、ヴォルティス、アビスパ、ギラヴァンツ北九州、V・ファーレン長崎など、サンガを除く上位陣との直接対決も残している状況を見れば、遠藤の言葉通りにあきらめるわけにはいかない。 「(サンガとの)前半のような戦い方ができれば、非常に手応えがあるんじゃないかと。週末までにはもう2、3回繰り返し見て、イメージを膨らませていきたい。ただ、何ひとつレギュラーの保証はされていないので、強い気持ちと高いモチベーションをもって、同じポジションの選手たちに負けることのないように、監督が納得してピッチに送り出せるような選手になりたい」 消滅した横浜フリューゲルスを皮切りにサンガ、ガンバに続く4つ目のチームで待つ競争や、ガンバ時代にチームメイトだった今野やMF大森晃太郎との共闘を心待ちにする遠藤の契約は来年1月末まで。延長や完全移籍は考えていないため、12月20日の最終節までにすべてを燃焼させる。 新天地での背番号には「空いていたから。背番号は全然気にしていないので」と、現状で最も大きな「50」を自ら選んだ。早ければ敵地で10日に行われる松本山雅FC戦で訪れるデビューへ向けて、そして奇跡を目指して、単身赴任で静岡県民となったレジェンドは自然体で心身を練り上げていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)